「昨夜、お腹の調子が悪いって言ってた」
志織はミズホさんに言った。手には朝食を持っている。俺は話を合わせる。
「そうなんだ。きっと久しぶりにまともな食事をしたせいかなぁ。まだ調子が悪いから、志織、お前が食べてくれ。俺はこれだけでいい」
と皿から蒸かしたジャガイモを一つ取った。
「あまり無理しない方がいいね」
と志織は再びフォローした。ミズホさんは口を挟もうとしたみたいだが、閉じたまま。
「ミズホさん、一緒に食べよう」
と志織はフォローを重ねる。
「今日は何をするんだい?」
と俺はミズホさんに話題を振った。あまり志織とだけ話すのもよくない。
「今日はね。志織ちゃんにブルーベリーのある場所を教えに行くの。ヒロさんもついて来てくれる?」
「遠いの?」
「ううん。すぐそこ」
断る理由が浮かばない。午前中だからまだツトムさん達は寝てるだろう。
「一時間位なら」
時間制限をする位しか出来なかった。
「ずっと独りだと寂しいと思って」
ミズホさんは笑って言った。俺はミズホさんの優しさに気付かないフリをした。
「大きな袋を持ってきたの。いっぱいになるまで取るんだ」
志織がフォローを入れた。ミズホさんは笑った。俺も笑った。
「じゃあ、一時間だけ。見張りをする約束をしたばかりで見張りしてないのがバレると困るから皆には内緒ね」
「大丈夫。志織ちゃんと二人で採った事にします」
これでツトムさんの嫉妬を買わなくて済む。
俺の朝食を二人が食べ終えた後にブルーベリーを採りに行った。
ゾンビは見当たらない。ミズホさんと志織がブルーベリーを採っているのを眺めてると、本当に平和な世界。とシミジミと思える。
ゾンビと共にあてもなく移動する日々。人間やゾンビに警戒しながら。水や食料を探しながら歩き続ける。
ここでの心配は、俺がゾンビとバレないように。人間関係を悪くしないように。それ位だ。
あとは、仲良くならないように。ミズホさんとの距離をもっと離しておきたい。あとで志織に言ってもらおう。
なんて言ってもらうか?火傷のせいで身体が弱いから無理はさせられない。ダメだ。手当てするといいかねない。
好きな人が居たけど死んだ。それも苦しい。
「手が止まってますよー」
ミズホさんの声と笑い声。俺は我に返りブルーベリーを摘み始める。
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