そこまで書いて、しばし指を止め、「いや、先分かりは良くないな」と俺は独り言。ストーリーに緊張感が無くなる。
左腕の手袋を外す。肘下から指までが膨らんでいる。肌には髪の毛や服の切れ端、小石が埋まっている。人間にあたる排泄物が、俺の場合は左腕から滲み出る。匂いは鈍感で分からないがおそらく生臭い。
臭さは自分だけなら大丈夫なんだが、志織がいる。
この腕はほっとけば大きくなり腐敗し、やがてボタボタと崩れ、もの凄い腐臭が漂う。腐った肉が腕にこびりつくのだ。
だから俺は腕を丸ごと切り落とす事にしてる。体内に入れた肉は、急速に分解、再構築され自分の血肉、骨となる。と、あの医者が言っていた。
実験と称し鉄ばかりを摂取した時があったが、左腕が重くなるばかりで無意味だった。手がハンマーやナイフみたいになれば。と少し期待していたのだが。
手を切り落としても、タンパク質やカルシウム…人肉を摂取すれば元に戻る。
今はもう人間の死体は見かけないのでゾンビから摂取する。気持ち悪いが片腕が使えなくなるのはとても不便。
豚肉を食べてみたが、皮膚が豚と同じような肌になったので、人肉以外は摂取しなくなった。
志織は寝たようだ。俺は腕を切り落としゾンビを摂取する為に静かに志織から離れた。
当然、志織が視界に入る場所しか移動出来ないが。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!