ならゾンビは?あれはもう人間ではない。襲ってくる。なら襲ってくる人間は?ポピュレーター達は?
俺は深い闇に落ちていく。それに志織が気付く。
「今は弱肉強食の時代よ」
志織の言葉で俺は浮かぶ。
俺の言い訳タイムが始まる。ライオンは可哀想と思いながら獲物を追わない。襲うのは、確実に仕留められる子供や弱った動物からだ。
それに遊びで襲うわけではない。生き抜く為に襲う。
でも俺は人間。でも動物の一種類。志織と生き抜く。というのはエゴなのか?
俺の生き抜く覚悟はそれ位のものなのか?色々な葛藤が心を支配する。正しい答えはない。
足元に空気を裂く音。見上げると、刑務所の塀の上から無数の矢が降ってきた。
俺は志織にかぶさり、シェーリーのトニはパペットの黒人の後ろに隠れた。
塀から一人がロープで器用に降りてきた。ポピュレーターだ。ソイツは背中の刀を抜いて両手に持った。二本持ち。
トニが聞く。どうする?と。逃げるか戦うか?
俺は砂利を掴み、降りてくる刀持ちのポピュレーターに思い切り投げつける。相手は壁を蹴って避ける。俺は予測していたので片方の手で小石を指で弾きながら、再び砂利を掴み投げる。弾いた小石は剣で防がれるが、砂利の方は相手が着地した時に何個か当たった。トニのパペットも砂利を拾い俺の真似をした。壁の上から矢が飛んでくる。
志織とトニに近寄せないように立ち回る。
「あの車の中へ」
トニは言う。
「罠かもしれない」
俺は叫ぶ。一台だけそこにある。明らかに怪しい。だが相手は近づいて来る。
刑務所の塀から矢を射ってきた男が二人、ロープを使い降りて来た。あの軽々そうな動きはどちらもポピュレーターだ。
無理だ。俺は志織を抱え逃げ出す。トニもそれに気付きパペットのトニがシェーリーのトニを担ぎ逃げ出す。
運が良いのか分からないが、追って来なかった。
「現実はこんなもんだな。仕方ない」
トニは言った。
「どうやって勝つの?」
俺は思わず言う。ゾンビや人間なら勝てる。だがシェーリーやパペット相手は無理だ。身体能力はもちろんだが武器がいる。武器を使いこなせる腕と技術がいる。そして経験。
中国は武術の国。少なくとも日本よりも殺伐としてるだろう。とてもじゃないが襲うなんて無理。襲われても自分の事すら守る自信がない。
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