ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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志織の小説.8

公開日時: 2021年2月4日(木) 07:38
文字数:976

  四国に渡る前に、私の知らないポピュレーターがいた。パペットは狂っていた。

  私とヒロに襲いかかる。ヒロにとっては初めての実戦。ヒロは相手の人間離れしたスピードに最初は戸惑い防戦一方だったが、なんとか倒せた。

  トドメを刺す時にヒロが躊躇する。それが命取りになる。ヒロの頭が潰れた。

  てっきり私に襲いかかるものだと思っていた私は助けるのを遅れた。

  ヒロの意識がなくなったので、私はヒロと繋がる。私はソイツの頭を潰し返した。

  ヒロの霧散してくパーティクルを回収する。が既に消散して集めた量ではこの身体を操るには足りない。物凄く悩んだが、私のパーティクルを加える。

  ヒロの頭の中で私はヒロに会う。

「分かる?」

「ここは?」

「ヒロと私の世界よ」

「どうなった?」

「ヒロは私を助けてくれた。アイツは還っていったわ」

「還るって?」

「AZのところよ。私もヒロも今の男もAZも全ては一つなのよ」

「ヨシオがいるよ。父さんも母さんも」

「えぇ、皆一つなの。この感覚を忘れないで」

「離れても一緒なんだ」

  私はうなづく。

「ヒロは私の物でもあるし、私はヒロの物でもあるのよ。AZもパルもトニも。人間もゾンビも同じ。全ては一つなのよ」

私は言った。理解してるはず。覚えてるかが問題。

「さぁ離れるわね。しっかり気を張っててね」

  視野が明るくなり私の目の前にヒロがひざまづいていた。

  頭も血まみれだが修復され元に戻っていっている。


  ヒロが立ち上がり私を見る。

「俺の意識は?」

「しっかりしてるわ」

「違う。俺の考えや俺の想いは?」

  ヒロは少し混乱していた。自我が出ている。

「もちろん、今思ってる事はヒロの考えよ。もし私やAZの考えなら、そんな事は決して言わないわ」

私はヒロの手を握った。

「ヒロはしっかりと自分の考えで行動しているのよ。もしヒロが嫌なら私を捨ててもいいのよ」

「イヤだ」

「その否定は誰の思い?私?」

「違う。俺がイヤだ」

「ほら、ちゃんと自分の思考じゃない」

  そう、この問題は誰もが通る道。操られてる。一度疑うと自分を見失う。必要以上に疑心暗鬼になり、自我が崩壊する。言いなりの方が楽なので、自分の意志を放棄してしまう。

「ヒロは何をしたい?」

「志織を守りたい。志織と一緒に居たい」

「それは私が命令してるの?」

「違う。俺が守りたいんだ」

  このヒロの気持ち、態度、想いが私にはとても嬉しい。


  私は血まみれのヒロを抱きしめた。


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