ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.101

公開日時: 2021年3月8日(月) 08:58
文字数:1,054

志織がいつもより遅く起き出す。おはようの挨拶の後に船の待合室へ向かう。日課のトイレ。志織一人だとゾンビが近づくのも日課。俺もついていく。出掛ける支度するからな。とトニが言った。


「まずは自衛隊基地。人が居たり燃料がなければ洞窟探しに行こうか」

トニが地図を広げ、指を指しながら行き先をペンで記す。海沿いを歩く予定。

二手に分かれ、小さなマリーンショップでリュックやキャンプ用品を揃え、ヘリコプターから適度な荷物を取り出す。


自衛隊基地まで歩きで多分、一昼夜はかかる。かまわなかった。急ぐ事はない。


「サーフィンしたいんじゃないのか?」

トニはパルに聞く。

「落ち着いたらやるよ」

サーフィンしたいと言い出したパルのあまり気乗りじゃない様子。やるべき事を優先してるのかもしれない。


ともかく拠点探し。空は快晴。志織は半袖に七分丈のカーキズボン。季節は梅雨時期だろう。湿度は分からないが洞窟なら涼しいはずだ。


パルが電気を引けたら最高なんだけどな。水力発電とか風力とかで。と俺はそんな事を思いながら歩く。


のどかな田舎道。草木の間を風が通り抜ける音。たまに鳥の声。空には白い雲と太陽。平和な景色。その世界に後ろからついてくるゾンビがそぐわない。


広く浅い河川敷で魚を捕る。キラキラと水面に光る鮎。

食べたかったな。とトニが言うのを横目に志織が焼いた鮎を口にしてる。

俺は食べた事はない。食欲は沸かないが食べてみたいと思った。


残った五、六匹の焼き鮎を笹で包み保存食にする。平穏な時間。


志織の息切れ。整備工場で休む。

パルが四トントラックからタイヤを外す。それから軽トラックを分解し始めた。

多分、志織を乗せる荷車を作るのだろう。手伝う。俺に技術と知識が欲しいと思う。

見た目は悪いが荷車が出来る。大きな車輪なので多少の段差でつまづく事は無い。とパル。なるほど。と俺。

志織を乗せ俺とトニのパペットで引く。うん。悪くない。


志織が音楽をかける。トニが軽く踊りながら歩き出す。

いいね。俺は思った。ずっとこんな感じで人生は過ごせるとは思ってはいない。パルは居なくなる。トニもずっとは居ないと思う。そして人間の世界に戻る。


摂取の為に人間を殺したくない。死んだ人間。土葬の国に住み墓荒らしか?インドでは亡くなった人間を河に流すらしい。そこなら可能だろうか?


「将来の事を考えても仕方ないぜ。楽しめる時は楽しむ。でないと何の為に生きてるか分からないぜ」

トニが音楽に合わせながら頭を揺らし、言った。きっとトニの経験から、それが最適なんだろう。

俺はトニにうなづき笑った。

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