ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.12

公開日時: 2020年9月24日(木) 17:38
文字数:1,161

  十体のゾンビが俺と志織の後ろをついてくる。新しく集まって来ても二十体にはならないだろう。そろそろ暗くなる。コンビニを見つけた。駐車場にあったワゴン車。窓は割れていない。それをコンビニの裏側の壁に動かす。

道からは見えないし、ここならゾンビがどこを押そうが倒れる事はない。


  どの車もガソリン補給口が開いている。ガソリンは空だという事だ。コンビニの中もほとんど空だろう。


  車を動かしたせいで肩が外れた。いくら気をつけても壊れる時は壊れる。

  ワゴンの中にシェラフや荷物を入れる。荷台を適当な場所に隠す。


「どこかに川とか無いかな?」

  志織は言う。多分、身体を洗いたいのだろう。どこの家も水はほとんど出ない。浄水場のポンプ加圧機と水道水濾過器の電気がつかないからだ。電気が無ければ水道水は出ない。


  コンビニ内を物色する。ゾンビの気配は無いが、めぼしいのも何も無かった。

「近くの民家に行く?」

  志織の言葉。俺は迷ったが、せっかく車を動かしたのもあり、移動はしたくはなかった。今日はここで宿泊するつもりだった。


「行ってみるか」

  新しいゾンビの姿は一体も居ない。普段なら新しいゾンビがやって来てもいいのだが。


  ゾンビが居ないという事は、ここら辺には人間も居ないという事。良い事なのだが、これだけ静かだと逆に気味が悪い。志織も感じてたのか、

「なんか静か過ぎてイヤだな」

  と独り言のように言った。

「カラー君達が居るだろう」

  俺は答えた。近くの民家を一軒ずつ家捜し。道路の荒れ具合や民家や庭の荒れ具合で、ここら辺に住民がいるのかだいたい分かるようになった。


  民家の押入れに布団があった。今夜は布団で寝るか?の俺の問いに志織はうなづく。


  布団。包丁。塩や砂糖の調味料。服。雨ガッパ。傘。軍手。魔法瓶。割り箸。漫画本。


「なぁ、シャンプーあったっけ?」

志織は、少ない。と答えた。

シャンプー。タオル。懐中電灯。これはありがたい。


「大きな枝切りハサミあるよ」

  志織が見つけた。枝切りハサミ。潤滑油。

  これだけの生活品が残ってるのは珍しかった。本当にありがたい。

  テレビの横にこの家の家族写真が飾られている。この家の中には血痕が無かった。無事を願う。


  隣の民家に移動。リビング。書き置きの紙があった。

[浩二へ。母さん達は本家にいます。見たら必ず来るように]

  地図も置いてあった。地図の三浦家の場所に赤い丸。この辺りの人達は早めに避難できたのだろう。


  地図。これも助かる。志織が近付く。

「もし浩二君が来たらどうするの?」

  俺は、紙に本家までの手書きの地図を書き[頑張れよ。地図は貰った]と書いた。


「行ってみる?」

  赤い丸で囲まれた三浦家はさほど遠くない。ここから十キロ程の場所。

「明日寄ろうか」

  俺は言った。多分、そこが本家だと思う。井戸がありそうだし、クワとかカマとか武器になりそうなのもありそうだ。


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