ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.26

公開日時: 2020年10月12日(月) 21:07
文字数:926

  ツトムさん達が来た。道路脇に置いた荷物を見て、「あまり無理するな」と言いながらも、目は荷物から離れない。他の男達は遠慮なしに荷物に近寄る。俺の「どうぞ」という声に物色し歓声を上げている。酒もタバコも薬もお菓子もある。生理用品に子供服。本にゲーム機。様々な缶詰。都会から離れる程荷物は多くなる。店が少なくなるからだ。もうどの店の品物は使えない物ばかりか、無くなっている。

  荷物の中身は三浦家にない物が多い。

  いいのか?とツトムさんが聞く。俺はうなづく。俺達が欲しい物をツトムさん達は持ってますから。と返す。俺達に無い物。野菜と安全。風呂や布団の快適さ。


  予備の望遠鏡を渡す。ここと三浦家から見える範囲の場所にポストを作って欲しいと言った。それから、赤、黄、緑の板で、赤なら出掛けてる印。黄色ならゾンビが居る。緑ならポストに用事が書いた紙があります。と説明をする。これならいちいち互いに行き会わなくても望遠鏡で覗くだけで事足りる。「緊急な時にだけロケット花火を打ち上げます」とロケット花火を見せた。


  三浦さんはイヤな顔もせずに納得した。

「ゾンビはどうした?」

  ツトムさんの質問に、全部コンビニに押し込めました。と答えた。でも力が強いから出て来るかもしれません。と付け加える。一つ質問をする。

「ツトムさん。あの、なんで荒らされてない民家があるのですか?」

  ツトムさんは得意げに話した。

「あれは撒き餌だ。荒らされてない民家にロクな物は無いが、片っ端から家探しするだろ?ある程度家探しすれば満足し、ここに立ち寄る可能性は低くなる」

  俺は、なるほど。とうなづいた。

「確かに可能性は低くなりますね」

  と感心顔で言った。ツトムさんはフッと笑った。

  多分、あと五、六年もすれば元の世界になるのだと思っているのだろう。

荒らすといっても家屋を壊したりはしない。使えそうな物が無くなるだけだ。


  前に通った中型マンションでは、全てのドアと窓ガラスにテープでバツ印が貼ってあった。家探し終えた家か、何も無かった家かの印だと決めつけていたが、あれはひょっとしたら目くらましだったのかもしれない。もし、目くらましの為の印だったら感心する。


「今日、やる事なくなったな」

ツトムさんは遠くを見て考え込んでいる。


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