ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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小説.20

公開日時: 2020年10月2日(金) 18:22
文字数:376

「もう寝ないと」

  俺はそう言って部屋から出ようとした。とてもじゃないが、いたたまれない。


「ねぇ。助けてくれてありがとう」

  志織は小さい声だがはっきりと言った。今まで一度も言われてない。ずっと言いたかったのか分からない。だが勇気を振り絞って言った。そんな真摯な言葉に聞こえた。

  俺は言ってしまった。

「俺はこんな身体になってしまった。志織が居ないと人間に出逢った時に殺される可能性がある。だから俺には志織が必要なんだ」

  多分、これも俺の本心なのだろう。必要だから見限らない。見捨てない。裏切らない。離れない。

  志織は黙ったままだったが、さっきまでの頑なな雰囲気はなくなっていた。


「病気になったら困るから寝なさい」

  俺は言って廊下に出た。理に適った事だけが信じられる。理想論や感情論はこの世界では通用しない。


「邪魔なんかじゃない」

  道路のゾンビを見下ろしながら俺は呟いた。


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