「もう寝ないと」
俺はそう言って部屋から出ようとした。とてもじゃないが、いたたまれない。
「ねぇ。助けてくれてありがとう」
志織は小さい声だがはっきりと言った。今まで一度も言われてない。ずっと言いたかったのか分からない。だが勇気を振り絞って言った。そんな真摯な言葉に聞こえた。
俺は言ってしまった。
「俺はこんな身体になってしまった。志織が居ないと人間に出逢った時に殺される可能性がある。だから俺には志織が必要なんだ」
多分、これも俺の本心なのだろう。必要だから見限らない。見捨てない。裏切らない。離れない。
志織は黙ったままだったが、さっきまでの頑なな雰囲気はなくなっていた。
「病気になったら困るから寝なさい」
俺は言って廊下に出た。理に適った事だけが信じられる。理想論や感情論はこの世界では通用しない。
「邪魔なんかじゃない」
道路のゾンビを見下ろしながら俺は呟いた。
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