ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.115

公開日時: 2021年3月22日(月) 08:45
文字数:1,071

夜中にパルが小屋から出て来た。彼の顔色を伺う。志織に何かあったか?


「俺はダメだった」

パルが言った。志織はどうなのか?もし志織がダメなら[俺も]と言うはず。だから大丈夫。と思うも聞かずにいられない。

「志織は?」

「あいつは大丈夫。呆れる位強い」

パルは弱い笑顔で言った。ホッとしつつもパルはパペットの身体も失えばAZの元へ還る事を思い出し、俺は残念に思う。顔に出たのをパルは見て、

「まぁ俺は違うポピュレーターになるからな」

自分にも慰めるようにパルは呟く。俺はなんと答えていいか分からず、あいまいに何度かうなづく。

「とりあえず誰も来ない。戦車や装甲車が来たらヤバイから穴は掘った。摂取はどうする?」

俺は簡単な報告と一番の疑問を口にする。喰べなくなって八日目。

「補給は行くしかないがギリギリでいいだろう。とにかくヒロは生き延びる事が優先だからな」

穴の事は何も言わなかった。摂取はやはり必要みたいだ。


「疲れただろう?代わろう」

パルが言った。ずっと見張り続けるのは精神的に疲労する。でも俺は慣れている。これが二、三ヶ月も続けばイヤになるのだろうが、十日すら経ってはいない。俺は首を振る。

「一緒に見張ろう」

俺の言葉にパルは俺の隣に寝そべる。

「なぁ、ヒロは人間ではないがパペットではない。多分不具合で出来た新しい存在なんだろうな。もしくはAZが意図して創ったか。そのどちらかなんだ。あの、本当の役目はなんだ?」

最後は少しドモってパルは言った。

「不具合だと思うよ。正直AZからは何も言われてない。むしろ本当にAZは居るのかすら思ってる。人間でいう神様みたいなもんだと」

俺はAZの事を体感してないから今だに半信半疑。


「AZは神ではないな。地球や時間、鉱石や鉄。宇宙を創ってない。一つの精神体。思考を細く分割出来るから集合体だ。分離しなければ一つの個体意識だが分離した分意識は別れてく。その一つが俺。それはハッキリと断言する」

「今までは何処にいたの?地球で産まれた訳じゃないだろ?」

「気付いた時には宇宙にいた。ずっと彷徨っていた。長い長い間な。意識は途切れず何もない空間をただただ星を眺めるだけの時間。一秒たりとも意識を途切らす事も出来ずにそこに居るだけの存在。何千年ならまだしも何億年も。自分の精神を分離し考え合うのも限界はある。最終的に同じ思考だからな」

俺はパルの話に違和感を感じた。話し方がおかしい。パルの目は遠くを見て虚ろ。まさかと思い、聞く。

「ひょっとして…AZ?」

それしかあり得ない。

「AZもパルも同じだが、今はAZだな」

俺は思わずパルから距離を取った。

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