ダビデのそばに居るのは二十人位。タオの所には既に味方は二人しか生きていなかった。
時間にして十分も経っていない。タオの圧倒的な強さ。技の強さより力の強さ。破壊力の強さ。
ダビデが剣を抜くやいなや、目の前のポピュレーター達の後頭部めがけて弧を描くように薙ぎ払う。ダビデのパペットも近くのポピュレーターを殺し始めた。
皆の覆っていた赤いパーティクルが消えていたのに気付いた。殺す前にダビデが外した。志織のも外れてる。きっと俺のも。ダビデは今ここで全員を殺すつもりだ。パーティクルの回収の為に。
他のポピュレーターが一斉にダビデに向かう。突然のダビデの裏切りに驚いたのは俺だけだった。
どのポピュレーターの顔に裏切られた怒りは見えなかった。本当にアリやハチのように無機質な感情なのかもしれない。
ダビデは華麗に受け、かわし、殺す。手が何本もあるように剣を自在に振り回す。素早い。ダビデのパペットも素早い。ポピュレーターの攻撃がモノの見事に二人に当たらない。
よく見てたら俺も戦えると志織は言った。だが、ダビデもタオとも、どうやって戦えば勝てるのか。
俺は瞬殺される。串の棒よりまだ銃の方がマシだと思ったが、どちらを使っても勝てるとは思えない。
志織は動いていない。ダビデやポピュレーター達が志織にも襲うと身構えていたが志織には向かって来ない。
タオが近づいてくる。ダビデが全てのポピュレーターを倒した。ポピュレーターから湯気のように出ているパーティクルがダビデの身体に吸い取られていく。
死体の上には、俺と志織。タオ。ダビデ、ダビデのパペット。
タオが肩のショルダーや胸の防具を外す。ヘビー級のボクサーのように見える。
俺と志織の立ち位置はなんなのか?ダビデかタオ、どちらかに殺され吸収される為に居るのか?
「逃げよう」俺は志織に小声で言った。 そう。絶好のチャンスだ。マンホールもすぐ近くにある。タオとダビデが戦ってる間に。
「大丈夫。ヒロなら戦える」
志織の言葉。それから志織は俺の方に振り返った。
「いい。よく見ててね。ヒロだから勝てるのよ」
志織はまっすぐ俺を見つめた。真剣な眼差し。必ず勝てる算段がある。俺は志織を信じる。信じた。それしかない。腹をくくった。
ダビデとダビデのパペットがタオに向かった。
ダビデのパペットはタオの足元を狙い、シェーリーのダビデが剣をタオの頭めがけてフェンシングのように突き刺し続ける。タオは地面をえぐるように蹴りあげる。地面の石が飛び散る。パペットは腕で顔を防ぐ。タオは車のドアをちぎるようにもぎ、ドアを振り回す。剣を折ろうとしてるのか?
振り回すドアの合間を縫ってパペットが間合いに入ろうとするがタオはパペットを潰そうと地面にドアを叩きつける。
俺は戦う様をよく見続ける。だが分からない。どうやって勝てるかが。
俺と志織は、見届け役なのか?俺も志織も見ているだけ。
と思ってた矢先、ダビデとダビデのパペットがこっちの方にやって来た。志織が俺を後ろに押しやり構える。
「よく見ててね」
俺はそのまま後ろに下がった。
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