志織がそばにいれば、このまま漂ってもいいかな。と思うが、そうもいかないのも分かってる。
「何日くらい?」
どれくらい意識がなかったのか?何日で俺の身体は元に戻れるのか知りたかった。
「五日と半日」
俺はうなづく。
「志織も可能なのかな?」
志織も松果体さえ無事なら復活が可能だと思ってるが、一応聞いてみた。
「多分ね」
その答えに俺は黙る。二人乗りの小さな船。船底に血まみれの塊のような数体の死体が転がっている。それとオールが二本。他に何もない。
周りを見渡すが陸は見えない。あてもなく漂ってるだけ。だが空は快晴。波も穏やか。死体もこれだけあれば二週間は漂っていられる。いや、死体が腐ってダメになるか。
俺は立ち上がる。若干、身長が低くなってるが今までと違和感はあまりない。
ダビデに殺されないようにするには。考えられるのは、志織を審判の日まで頭だけにする。復活しそうになったらまた頭だけにし動けなくする。だがその方法は志織は多分。と言った。ダビデから逃げる為の方法で死んだら本末転倒。
かつヒロだけなら助けられるわ」
志織がボソッと言った。俺は即座に首を振り言う。「二人一緒じゃないとダメだ」
どうやるのか分からないが俺だけ生きるだけの人生は全く意味がない。
「AZ見てるんだろ?」
俺は言ってみた。何も起こらない。だが絶対見てるはずだ。
「チャンスを探し続けるしかないわね」
志織が言った。ダビデを殺すしかないという事か。それにはまたダビデのそばに居続ける事。でもチャンスが無かったら確実に殺される。行き当たりの成り行きに任せるしかないのか?
「ダビデはパーティクルが欲しいんだろ?あげてしまえばいいんじゃないかな?」
殺されるならあげてしまえばいい。ダビデは殺しが目的でない。
「きっと全て欲しがるわ。そしたら私、百年も生きられない」
「その間に地球の危機を起こせばまたAZがパーティクルを放出すると思う」
志織は黙る。この雰囲気は志織は納得したくない沈黙だ。プライドか。いや、ダビデはそんな甘くないのだろう。
「色々考えてみよう」
俺は言った。それしか言えない。
再び空を見上げる。白い雲に青空。海面は穏やかな波を立て、船は心地良いリズムで揺れている。
「海に入って血を流そう」
俺は言って海に飛び込んだ。顔を出すと志織が飛び込んだのが見えた。
疲れは無い。病気も痛みも空腹も無い。睡眠も必要無い。力はある。長生き出来る。水中に長く居られる。そして大事にしたい人がいる。
人間の世界なら凄く強い。だがポピュレーターの世界ではごく普通。強いのはたくさんパーティクルを持ってる者。
色々な思いが頭を駆け巡る。これから起こる現実に大きな不安がある。それを誤魔化すようになる。それではダメな事も知ってる。
再び海に潜り、頭と顔を洗う。
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