ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.53

公開日時: 2020年12月24日(木) 07:56
文字数:1,433

「おい。もう行こうぜ。誰かさんが居るから移動も遅くなるだろうしな」

  信長の口の悪さ。だが性格はシンプルだ。裏表はない。これはこれでやりやすい。

「じゃあ、初めての人が居るからもう出掛けようか。その代わりゆっくりと行こう」

  俺は同意した。信長はニヤリと笑った。

「おい、これ持って行くのかよ」

  と俺の荷台を見た信長は言った。

「ずっとこれで旅をしてたんだ。大丈夫」

「空じゃねぇかよ」

「これから増える」

「お前一人で運べよ」

「ずっとそうしてきた」

  あまり相手にしない。信長以外は誰も話さない。いざという時、頼りになるのは信長だろう。率先して突っ込める。他の四人は厳しい。人間と出逢った時は、信長のような剣呑な空気を出せる人が有利なのだ。


  コンビニ前を通る。俺はコンビニ内を覗く。ゾンビの口周りが血で濡れている。共喰いしたのだろう。

「気になるなら殺してやろうか」

  信長は俺を見て言った。俺は首を振る。無言のまま。ときおり信長の独り言のような愚痴を聞きながら町の近くまで辿り着く。

「少し休憩にしよう」

  俺の言葉に信長だけ反論。

「町に着いてからにしようぜ。食いもんとかもあるだろうしよ」

  食べる物がある。信長がそう思うなら他の人間も思ってるはず。つまり人間が居る可能性が高い。それにゾンビがそろそろ襲わなくなるはずだ。


  俺は返事を返さず望遠鏡を眺める。

「おい。聞いてんのかよ。町で休もうつってんだろ」

  信長は少し大きい口調で恫喝する。だが信長の目は本気ではない。もし本気なら文句言わずにすぐ殴りかかってくるだろう。

「信長君、君一人で町で休んでいいよ。ゾンビも襲わないだろうし」

  それとも一人じゃ怖いのかい?と付け足したかったが言わなかった。まだ始まったばかり。このままキレられて帰っていかれるのも困る。

「あぁ、そうするわ。ゆっくり休んどれ」

  信長は一人で町に向かう。

「合流場所は」と俺は言うのを「分かってるよ」と信長に遮らる。


「難しい性格でごめんな。でもあいつ強いんだ」

  と一人の男が言った。俺は、分かってます。と答えた。

  再び望遠鏡で、スーパーや服屋とバイク屋とかの散策する順番を決める。ゾンビが多く集まってる場所を探す。

「さぁ行こうか。遅いとまた信長に言われる」と俺は笑って言った。皆、黙っまま腰をあげる。


  町中。スーパーには何もなく。服屋で黒いシャツと長靴。靴屋で頑丈な靴。バイク屋でツナギとヘルメット。


  ゾンビの数は意外と少なかった。この距離なら三浦家に来てもよさそうなのだが。この町に他の人間が居るのだろう。望遠鏡で人間がいそうな場所の目星をつけたのは三箇所。


「あのモールには行かないの?」

  ミズホさんが尋ねる。あそこには人間が居たはず。と答える。ゾンビが店内へ入ってたのを見た。

  多分、ミズホさんは多分モールにはブランド物や化粧販売店があるから行きたいのだろう。

「帰りに寄れたら寄ろう」

  とミズホさんに言った。信長が居ないから言えた。


「遅えぞ」と信長は遠くから大声を出した。俺よりも先に見つけた。カンはいいのだろう。拠点は五階建てマンションの四階の一部屋。


「誰も居なかったぜ」

  とバットを素振りしながら信長は言った。バットには血が付いている。多分ゾンビの頭をかち割っていたのだろう。俺はうなづいた。

「調べなくてもいいのかよ」

  と信長。俺は、信長君が調べだのなら大丈夫だろ。と答えといた。

  部屋は布団と空のペットボトル以外は何もなかった。とりあえず、ヨウジ君とミズホさんを残して四人で三時間だけこの辺りを散策する事に。


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