ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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志織の小説.13

公開日時: 2021年2月9日(火) 08:46
文字数:774

  ジェットエンジンからガスタービンエンジンに換えないとダメだとパルが言う。航空燃料が無いから治しても飛べない。ガスタービンエンジンなら灯油でも飛べるとの事。


  灯油を集め回りながらパーティクルも回収する数日。


  最後の審判の日は、空からアイポが居なくなり、代わりにマンスゥが空を覆い尽くす。マンスゥの役目はポピュレーターが自分の体内に集めたパーティクルをAZの元へ運ぶ。


  それまでにポピュレーターから出来る限り奪う。もちろん参加しなくてもいい。逃げまくってもいい。私はそのつもりだったが今は違う。


  他のポピュレーターを見つけると私達は無差別に襲いかかった。単独のポピュレーター相手には、なるべくヒロに経験させたい為に、皆がヒロのサポートに回る。

  ヒロの成長はなかなかのもので、自分で工夫や創意を重ねて闘いの経験を積んでいく。


  心配なのは精神面。元々あまり話さないのだが、中国に来てからさらに話さなくなっている。

  私と二人きりになる時間がほとんど無いのも原因だと思う。


  ある日、私達二人きりでパーティクルを回収していた時にヒロが弱気を吐いた。

「俺が足手まといだったらごめん」

と。私は力強く説明した。

「ヒロといつまでも一緒に居たいからパーティクルを集めてるの。そうでなかったらこんなに集め回らず、日本でノンビリしてるわ」

  私はなんとかヒロにこの気持ちを分かってもらいたい。


  私は独りで生きてきた。それが普通だったし何よりも気楽だった。

  私達ポピュレーターはAZと一つだと分かってるからこそ孤独でいたいと思ってる。私も同じだった。


  でもヒロの存在で私は独りで生きるのは虚しく感じる。今まで何人かの人間と一緒に暮らした事もある。だが長くは続かなかった。

  私だけが歳を取らず、味覚も痛みも共感できない。どの相手も嫉妬するか、世間から隠れた生活に嫌気がさすかで決別した。


  ヒロは違う。私と同じ。


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