ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.111

公開日時: 2021年3月18日(木) 08:48
文字数:911

「高性能スコープがあるかもしれない」

パルはそう言い小屋に入り箱を片っ端から探す。トニが俺に小屋に行け。と首を動かす。


「いいのがない」

パルが言いながら机の上にスコープを何個か置く。探し出したスコープはどれも同じ型のスコープだった。ポピュレーター達にとってスコープはアテにならない武器。狙撃は向いていない。

俺の唯一の利点が出来た。遠くからの狙撃。スナイパー。


パルが色々な銃を品定めして一丁の銃を俺に手渡し言った。「頼むぞ」

俺はうなづく。俺は役に立てる。背中がゾクッとなる。

ポピュレーターは狙撃される可能性は低いと思ってくれていたら助かる。自分が出来ない事は、同じポピュレーターも出来ないと思うはずだ。


ふと思った事を試す。俺は弾の入った鉄缶を持ち、パルから少し離れて聞く。

「この文字読めます?」

「ダンガーだろ」

「ならこれは?」

次に小さな文字を指す。

「フルメタルジャケット」

「これは?」

一番小さな文字を指す。

「…分からん」

「全く?」

「ボヤけてるな」

俺は鉄缶を置いてパルの横に並び鉄缶を見る。小さな文字もしっかりと読める。ボヤけてもない。


ポピュレーターは俺より目が悪い。俺の視力は普通なはず。

視力の代わりに発光で見れる。人間は発光が見えない代わりに視力が発達したのかもしれない。

どちらでもいいが、ポピュレーター達より俺の方が視力が高い。

使える唯一の武器。正直、かなり嬉しい。


「志織達が激戦区に入った。俺達は動けなくなる」

見張りをしてたトニがドア越しから声をかけた。

「俺は視力がポピュレーター達よりかなりいい。スコープを覗くと発光が消えるから狙撃できる」

俺はトニに言った。本体のトニへ伝わる。志織にも伝わるだろう。


「誰かがスコープのいいヤツを持ってくるそうだ」

パルが言った。すでにパルのシェーリーが動いてくれていた。

「下に横穴があっただろう。その通りに隠れた穴があるんだ。その奥に俺達がいる」

ダビデのパペットを背負いながらトニが言った。俺はうなづく。


絶対に無理するなよ。危なかったらその穴へ来るんだ。お前を死なせたら俺達が志織に殺されるんだからな」

冗談混じりにパルが付け足しハシゴを降りる。

「頼むぞ」

パルが俺の肩叩き、トニの後に続く。

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