一気に小説を最後まで読み終わる。
読んでる最中から、志織の小説を実話として読み続けた。
騙されてた。とか、嘘をつかれていた。という疑心感や怒りは、これっぽっちもない。
強いてあげるなら、俺に早く伝えたとしても志織に対する気持ちは変わらないのに。という寂しさ位か。
志織なりの気遣いなのだろう。
「これって実話だよね」
俺は言った。寓話でも実話でも、変わりはない。志織も覚悟はしていたのだろう。真面目な顔で謝った。
「嘘をついてごめんなさい。いつ話そうかずっと迷っていたのよ」
「未来もこうなるの?」
志織は首を振る。
「俺の事は本当?」
「理論的にはそうだと思う。試してないし、もし間違っていたらイヤだからやれないし、やらないわ」
それから何度も読み返す。これは小説風になっているが、この世界の説明書だ。
AZがやり過ぎた人間を懲らしめる為にパーティクルで人間を脳硬化し、人間の世界が変わった。そのパーティクルの回収役に志織達のポピュレーターが居る。そこまでは事実として認識できた。
そしてポピュレーター同士をサバイバルさせる?生き残った強いのがカーリーと呼ばれ、それが真の始皇帝やエジプトの王を操った?それらが志織と友達?
どこまでが事実でどれが虚構なのだろうか。だが、全て事実だとしても俺のやる事は決まってる。
志織を守る事。
「とにかく俺が現実にやるべき事は?」
俺は聞く。
「パーティクルをたくさん回収する事。そしたら私はヒロと同じ身体になれるの。シェーリーという存在になるのよ。ヒロとずっと一緒に居たいの。それは変わらない事実よ」
シェーリー。タオが言ってた俺に言ってた単語だ。
「ポピュレーターでなくて?」
「ポピュレーターはパペット、シェーリー全てを含むわ。シェーリーは本体で、操れる予備の身体をパペット」
納得がいったが、違う疑問はまだある。
「登場人物は事実?」
「えぇ、実在するわ」
「パーティクルを回収し、志織をシェーリー、そしてカーリーにする。その為に俺がトニに戦う方法を教わる。でも志織から教わってもいいんじゃない?」
「闘い方が違うのよ。私のは直接、松果体に刺すやり方」
「俺がパペット?」
志織は黙る。無言が答えだ。聞いてから失敗したと思った。それがあるから志織はずっと黙っていたと思った。志織の辛い気持ちが分かる。それでも聞いてしまう。
「俺を操ろうと?」
「ごめんなさい。最初はそうだったの」
俺も小説に書いた。自分の弱さを。志織に知って欲しくない事も書いた。かなり悩んで何回も書き直して書いた。きっと志織も同じ気持ちだろう。
「謝る事はないよ。俺は死んでたかゾンビになっていた。もし人間のままでも何処かで死んでたはずだ。だが今は違う。志織がいるし、志織を守る目的もある。今が全てだ」
俺は志織の目を見て言った。
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