ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.84

公開日時: 2021年2月18日(木) 09:34
文字数:1,139

  一気に小説を最後まで読み終わる。

読んでる最中から、志織の小説を実話として読み続けた。

  騙されてた。とか、嘘をつかれていた。という疑心感や怒りは、これっぽっちもない。

  強いてあげるなら、俺に早く伝えたとしても志織に対する気持ちは変わらないのに。という寂しさ位か。

  志織なりの気遣いなのだろう。


「これって実話だよね」

  俺は言った。寓話でも実話でも、変わりはない。志織も覚悟はしていたのだろう。真面目な顔で謝った。

「嘘をついてごめんなさい。いつ話そうかずっと迷っていたのよ」

「未来もこうなるの?」

  志織は首を振る。

「俺の事は本当?」

「理論的にはそうだと思う。試してないし、もし間違っていたらイヤだからやれないし、やらないわ」


  それから何度も読み返す。これは小説風になっているが、この世界の説明書だ。

  AZがやり過ぎた人間を懲らしめる為にパーティクルで人間を脳硬化し、人間の世界が変わった。そのパーティクルの回収役に志織達のポピュレーターが居る。そこまでは事実として認識できた。

  そしてポピュレーター同士をサバイバルさせる?生き残った強いのがカーリーと呼ばれ、それが真の始皇帝やエジプトの王を操った?それらが志織と友達?


  どこまでが事実でどれが虚構なのだろうか。だが、全て事実だとしても俺のやる事は決まってる。


  志織を守る事。


「とにかく俺が現実にやるべき事は?」

  俺は聞く。

「パーティクルをたくさん回収する事。そしたら私はヒロと同じ身体になれるの。シェーリーという存在になるのよ。ヒロとずっと一緒に居たいの。それは変わらない事実よ」

シェーリー。タオが言ってた俺に言ってた単語だ。

「ポピュレーターでなくて?」

「ポピュレーターはパペット、シェーリー全てを含むわ。シェーリーは本体で、操れる予備の身体をパペット」

  納得がいったが、違う疑問はまだある。

「登場人物は事実?」

「えぇ、実在するわ」

「パーティクルを回収し、志織をシェーリー、そしてカーリーにする。その為に俺がトニに戦う方法を教わる。でも志織から教わってもいいんじゃない?」

「闘い方が違うのよ。私のは直接、松果体に刺すやり方」

「俺がパペット?」

  志織は黙る。無言が答えだ。聞いてから失敗したと思った。それがあるから志織はずっと黙っていたと思った。志織の辛い気持ちが分かる。それでも聞いてしまう。

「俺を操ろうと?」

「ごめんなさい。最初はそうだったの」 

  俺も小説に書いた。自分の弱さを。志織に知って欲しくない事も書いた。かなり悩んで何回も書き直して書いた。きっと志織も同じ気持ちだろう。


「謝る事はないよ。俺は死んでたかゾンビになっていた。もし人間のままでも何処かで死んでたはずだ。だが今は違う。志織がいるし、志織を守る目的もある。今が全てだ」

  俺は志織の目を見て言った。


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