どうだった?と聞かれる。全部開かなかったが鍵を見つけた。と答える。どこ?二十九階から上の部屋のどれか。と答える。
心配かけさせてしまった。下まで降りたから、ついでに少しでも役立つ物を探しに行こうかと思っていたが辞めといて正解だった。
何階だと思う?俺は聞いた。四十階。志織の答え。先に四十階に行く。一番奥の部屋のドアが開いた。
なんで分かったの?と俺。適当。と志織は笑って言った。
部屋には誰もいない。居た形跡もなかった。食べ物はなかったが高価そうな靴をはじめ、立派なドレッサーにブランドの香水、化粧道具。衣装スペースには大量のブランドの服。女優かモデルか、金持ちの愛人か。とにかく金持ちの女性が住んでた部屋だった。志織がここに住みたいと言う。もちろんうなづく。
水はミネラルウォーターが大量にあった。英語のパッケージ。多分この水も高価なのだろう。
風呂場来て。と志織。行くと風呂場というよりバスルーム。豪華で広かった。水が出ないのが悔やまれる。
それでも志織は身体を洗いたい。と言う。どうぞ。と俺はミネラルウォーターの一箱をバスルームに運ぶ。もったいないが、志織が入りたいなら仕方ない。
志織は長い時間バスルームにいた。様々なボディソープやケア用品があった。楽しんでると思う。
シルクのバスローブが何着もある。タオルもきっと高級品なのだろう。
俺は食べ物などを探す。栄養補助食品が大量にあった。多分、健康より美容の為と思われる補助食品だろう。そしてベッドの下のヴィトンのトランク。開けると札束。大雑把に数えても四千万円以上あった。
ドレッサーの引き出し。指輪にピアスにネックレス。どれも高価だと思える。鍵のかかった扉。無理やり引っ張る。開かないが、この部屋で一番価値のある宝石かなんかだろう。
今は同じ引き出しの下にあったサプリメントの方が価値がある。ほとんどがビタミン系。こっちの方が本当に助かる。
志織がバスローブを着て出てきた。下着も凄いの。と何故か嬉しそうに言った。俺は履くの?と冷静を装って聞く。大きくて履けない。と志織は、はにかみ笑った。多分志織も恥ずかしいのだろう。それでも見せたいし、聞いて欲しいみたいだったので会話を繋げた。
俺は札束を見せる。アクセサリーの棚を開けて見せる、志織はやはり女の子。アクセサリーの方に文字通り、飛びついた。
ここに住める間はここに住もうと思った。俺の喜びは志織が嬉しく楽しんでる時だ。
ベッドも深々で、こんな世界にならなければ、多分一生住む事がない部屋だと思った。志織なら可能性があるだろう。
色々な写真が出て来た。この部屋の住民の顔だろう。俺も志織も知らないがきっとモデルだ。綺麗だった。
ポルシェの鍵も見つけた。ポケットに入れる。
俺は最上階から荷物とカップ麺を取りに行く。日も落ちて暗い。廊下から下を覗く。真っ暗だった。高い崖の上に立ってるような感覚に陥る。もっと下に降りないと分からない。火事は見える範囲ではなさそうだ。また志織が心配するかもしれない。この部屋の家探しも明日にしよう。と俺は志織のいる部屋へ戻る。
志織はベッドで寝ていた。多分ぐっすり眠れるだろう。ぐっすり眠って欲しかった。
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