ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.66

公開日時: 2021年1月6日(水) 08:36
文字数:838

「何したら、そんなになるのよ」

  閉口一番、志織が聞いてきた。

「昨日のヤツを見てさ、この力を使いこなせたら強くなれるんじゃないかと思って」

「で、何してたの?」

「木に登って木渡りを」

「猿みたいに?」

  俺はうなづく。

「上手くいきそう?」

「慣れてしまえばね。でも面白いよ。意外と」

「大車輪ってヤツ出来る?」

「鉄棒でグルグル回るヤツ?」

  志織がうなづく。

「やった事ないけど手袋をはめたら出来るんじゃないかな?」

  フーン。と志織。あまり興味は無さそうだ。

「そうそう、昨日のタオってのが、伝えとけ。って言われたんだが、誰に伝えるのか分からないんだよ。多分、三浦家の誰かかと思うんだが、それらしい人いた?」

「んー…全く注意して観てないから分かんない。でも…んー、居なさそうよ」

  誰だろうか?誰かと間違えたのかもしれない。俺のようなゾンビの身体をした人間と。

「俺みたいなの他に居ると思う?」

  志織は少し考えて

「居るんじゃないかな。私が考えてる小説には出てくるよ」

  志織は笑って言った。

「どんなお話なの?」

「主人公が私で、私は神様に仕える天使なの。そして、神様の指令でこの世界を変えてくお話」

「おー。面白そうだな」

「で、ヒーローはヒロにするね」

「お、おう。ありがとう。敵は?」

「敵は居ないの。でも人間かな」

「ゾンビじゃなく?」

「ゾンビも人間なの。意識の無い植物人間も人間でしょ?」


  思い付きとかじゃなくしっかりと練ってるようだった。最後まで練ってるのか知りたかったので、

「最後はどうなるの?」

「内緒」

  志織は笑って答えた。ちゃんと最後まで考えてるらしい。

  小説を考えた。それは志織も気持ちに余裕が出てきた証拠だ。

「ツトムさんとこで考えたの?」

  俺の質問に志織は首を振る。

「前からか?」

  志織はうなづき

「そうね。けっこう前から考えてたの。だって暇じゃない」

  少しだけ安心した。それなら三浦家を出ても多少なら余裕があるって事。

「携帯が欲しいわね」

  俺は志織の頼み事にうなづく。どのみち発電機と無線機を探しに行きたいと思っていた。

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