「何したら、そんなになるのよ」
閉口一番、志織が聞いてきた。
「昨日のヤツを見てさ、この力を使いこなせたら強くなれるんじゃないかと思って」
「で、何してたの?」
「木に登って木渡りを」
「猿みたいに?」
俺はうなづく。
「上手くいきそう?」
「慣れてしまえばね。でも面白いよ。意外と」
「大車輪ってヤツ出来る?」
「鉄棒でグルグル回るヤツ?」
志織がうなづく。
「やった事ないけど手袋をはめたら出来るんじゃないかな?」
フーン。と志織。あまり興味は無さそうだ。
「そうそう、昨日のタオってのが、伝えとけ。って言われたんだが、誰に伝えるのか分からないんだよ。多分、三浦家の誰かかと思うんだが、それらしい人いた?」
「んー…全く注意して観てないから分かんない。でも…んー、居なさそうよ」
誰だろうか?誰かと間違えたのかもしれない。俺のようなゾンビの身体をした人間と。
「俺みたいなの他に居ると思う?」
志織は少し考えて
「居るんじゃないかな。私が考えてる小説には出てくるよ」
志織は笑って言った。
「どんなお話なの?」
「主人公が私で、私は神様に仕える天使なの。そして、神様の指令でこの世界を変えてくお話」
「おー。面白そうだな」
「で、ヒーローはヒロにするね」
「お、おう。ありがとう。敵は?」
「敵は居ないの。でも人間かな」
「ゾンビじゃなく?」
「ゾンビも人間なの。意識の無い植物人間も人間でしょ?」
思い付きとかじゃなくしっかりと練ってるようだった。最後まで練ってるのか知りたかったので、
「最後はどうなるの?」
「内緒」
志織は笑って答えた。ちゃんと最後まで考えてるらしい。
小説を考えた。それは志織も気持ちに余裕が出てきた証拠だ。
「ツトムさんとこで考えたの?」
俺の質問に志織は首を振る。
「前からか?」
志織はうなづき
「そうね。けっこう前から考えてたの。だって暇じゃない」
少しだけ安心した。それなら三浦家を出ても多少なら余裕があるって事。
「携帯が欲しいわね」
俺は志織の頼み事にうなづく。どのみち発電機と無線機を探しに行きたいと思っていた。
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