ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.38

公開日時: 2020年11月22日(日) 08:16
文字数:800

  気分が再び重くなる。書くのを辞めて弓矢を作る事にする。竹はたくさんある。矢を先に作る。コツはまっすぐな竹を探し、重い方の節を先端にするように切る。それだけ。

  ゾンビを狙うなら足のスネから下だ。太ももから上は倒れない。足の甲を射抜けばスネよりも足止め出来る。だが角度が難しい。


  人間なら胴体を狙う。必ず当てる事を優先する。下手に頭を狙っても外したら意味がない。


  弓なら女や子供でも簡単に使える。威嚇するのにも使える。五、六人が弓を構えていたらまず近寄れない。三浦家の女性子供全員が構えてるだけで充分、牽制になる。先端にゾンビの体液を塗ってある。と脅せば効果は倍増する。


  単調な作業だが、ちゃんと考えて作らないとまっすぐ飛ばない。時間潰しや、イヤな思考から逃げたい時には最適な単純作業だ。作り上げた本数を見て満足も出来る。これだけ作ったんだという達成感。


  先端を細くし、反対側はヒモをかけられるように切り込みを入れる。鳥の羽を挿せば正確度も上がるが、実際は威嚇や牽制だけ。人数が多いから命中度が下がってもあまり問題ない。


  ひたすら作業に没頭する。余計な考えをしなくて済む。疲れはしない。三十本作ったら休憩する。


  どの矢の太さも出来るだけ同じ太さにしよう。節も綺麗に削って。と、こだわりだせばキリがない。

  時間はたくさんある。出来る範囲でこだわりだす。ちょっとでも曲がってない竹を見つけたくてかなり奥まで探す。


「何やってるの?」

  声が聞こえる。ミズホさんと志織が道路にいた。気づかなかった。これが他の人間だったらヤバかった。


  俺は竹やぶから戻る。

「トイレだったかしら。悪い事したかな」

  とミズホさんは志織に言ってた。志織は笑ってる。元気そうでなによりだ。充分寝れたのか?と聞きたかったが、ミズホさんもいるし、心配し過ぎなのもよくないかも。と思い言えなかった。

  充分寝れたに違いない。そう思い込む。


「弓矢を作ってるんだ」

  俺は言った。


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