正しい選択か分からない。だが志織は、仕方ない。と許した。だから正しいと思った。
俺は先生達と屋上に上がり、紙に簡単な地図を書く。あの赤色の屋根の家に子供服。このスーパーに大量の袋。このアパートには他の人間が住んでいる。このマンションにも人間が居る。と次々と思い出し、書きながら説明していく。
子供達は大人しい。ずっと不安を抱えて生きてきたのだろう。志織は集めた大量のお菓子を全て与えていた。それを見て俺は決めた。
「今から一緒に取りに行きましょう」
志織が助けてるなら俺も助けてあげなければならない。多分、誰もがそんな気持ちになるはずだ。多分。
バタバタしながら、物資を集め回る。結局、ひと段落したのは夜中遅く。
「僕達はここに一カ月以上暮らしていました。好戦的な人間には出会いませんでしたし、ゾンビも二階までは上がって来ませんでした。水だけは探さないと厳しいですね。食料もこの人数だと難しいです。まだジャガイモとか野菜の種がホームセンターにあったので屋上や教室で栽培するしか」
俺は出来る限りの情報を教えた。
「お酒にタバコもあります」
そして、もう寝ます。と言って先生達から離れた。
俺と志織、屋上に行く。
「ごめんな」
俺は謝る。志織を守ると言いながら、余計な事をしてしまった。
「断るつもりだったの?」
志織は尋ねた。俺は首を振った。
「多分ね。断ってたらヒロの事だからずっと負い目を感じて落ち込むと思うの。そんなヒロを毎日見るのはイヤだわ。だったら助けてあげた方がいい」
志織の言う通りだった。断ってたら確実に落ち込むだろう。俺はそこまで強くない。
「でもあの人達とは一緒にいられないわ。となると私達、出てかなきゃならないわ。どこ行く?」
志織は言った。これも志織の言う通りだ。俺にはとてもじゃないが守れない。家族ですから守ろうとしなかったのに、こんなにたくさんの人を守るなんて不可能に近い。
「いいのか?」
俺は志織に言った。また歩きながら生き延びる生活が始まる。平穏だったこの生活を捨ててまで。という意味の問い。志織はうなずく。
「いざとなれば、また学校探して住めるし。それに少し退屈してたのね。ここ」
志織は笑って言った。志織は退屈とか贅沢は決して言わない。俺に少しでも罪悪感を背負わせない為に言ったのだと思う。
[退屈だから新しい生活にしたい]そんな甘い考えでは生きていけない世界。志織の方がよく分かってる。
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