ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.34

公開日時: 2020年11月15日(日) 08:29
更新日時: 2020年11月23日(月) 08:50
文字数:986

  携帯電話がミシリとなった。知らずに携帯電話を強く握りしめていたらしい。慌てて離す。


  あれほどの怒りは、あれから一度も経験してない。もし、あの怒りに身も心も委ねていたら?

  今の俺では考えられない。あれも俺なのか?前の身体の持ち主の思考なのか?

  もし俺が先生の立場なら。を何回も考えた。年老いて時間がない。人類の為にゾンビの解明をする事に人生を賭けていた。

  脳の細胞をください。間違いなく断られるだろう。そうなると奪うしかない。俺ならそうする。誰もがそう考える。

  騙された方が。弱いのが悪いんだ。当然、そうなる可能性も考えなければならなかった。やはりそこまで考えられなかった自分のミス。

  あらゆる想定をしないのは、この世界では致命的。


  志織とずっと一緒だった。それが今夜久しぶりにそばに居ない。今までなら、志織の寝顔を見れた。今は見れない。あの時の気持ちを思い出したせいでナーバスになっている。


  志織はあの時二週間どんな気持ちだったのだろう。寂しかっただろう。不安だっただろう。いたたまれない気持ちになる。


  小説を書く気が失せた。明るい昼間に書こう。

  手回し充電をつなげ、グルグルと巻く。オーロラを見上げながら歩く。コンビニまで行こう。ゾンビがいる。動いてる何かを見たかった。


  オーロラは変わらない。いつもそこにある。周りの草木も、コンクリートの道路も変わらずそこにある。暗闇も変わらない。どんな状況になろうが変わらないのは強い。羨ましく思う。

  ただ在るだけだ。それ以上でもそれ以下でもない。でも感情があるからこそ、安堵や平穏さの幸せを感じる事が出来る。志織の笑顔で俺は笑える。小説を書ける。オーロラを綺麗と思える。


  ただ在るだけでは強いだろうがダメだ。多分、悲しみや憎しみの感情は必要なんだろう。嬉しさや喜びの感情の為に。弱さも必要なんだな。きっと。


  そんな事を考えながら歩く。ゾンビはコンビニから出ていた。俺のやる事ができた。ゾンビをコンビニに閉じ込める。壊れたガラスの場所に車を置きふさぐ。


  このゾンビ達は何も考えてない。幸せがない代わりに不幸もない世界にいる。不幸のない世界は幸せな世界。そうならばゾンビは幸せなんだろうな。


  俺の幸せは、志織が笑ってるのを見てる時。好きとか愛してるとかじゃない。


  愛しい。愛おしいんだ。

  

唐突に思い浮かんだ単語。ネットで意味を調べたかった。愛しいとは?愛おしいとは?を。


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