ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.52

公開日時: 2020年12月23日(水) 08:05
文字数:1,154

  ツトムさんが五人を連れて来た。一人多い。陰でコッソリと俺を見ていた男。ツトムさんの弟がいた。他の何人かは落ち着いていた。調達しに行った事があるのだろう。

「こいつはヨウジと言って俺の弟だ。初めてコイツが行きたいと言ってきた。悪いがコイツも連れて行ってくれないか?無理なら行かさないが」

  ツトムさんが言う。まさかヨウジ君も人減らしに?と無言でツトムさんを見た。ツトムさんは小さく首を振った。俺も小さくうなづいた。

「大丈夫だと思います。ゾンビより人間の方が怖いので大勢の方がいいですから」

  それぞれが名前を名乗る。問題の男。三浦信長。強調性のない名乗り方だった。独断で動くタイプだ。素直じゃない。良い面はプライドがあるので尻込みしない。

  三浦ヨウジ。人見知りが凄く、素直でやりやすい。多分、ミズホさんを心配してるか、お荷物扱いで行かざるおえないのか。そのどちらか。もしくは両方か。

  他の二人の男は力がありそうだったし、ツトムさんに従順そうだ。悪い所は、おそらく機転が効かない。

  俺はそれぞれの男の雰囲気から、そう目星を付けた。


「一時間後に出掛ければちょうどいい頃だ」

  夕方から移動し、夜明けまで歩くつもりだった。

「途中に拠点がある。壊れてなければな」

  とカギを渡される。マンションかアパートのカギのようだ。

「とにかく、頼むぞ」

  ツトムさんの言葉に、俺は皆に挨拶を言った。ツトムさんだけ本家へ戻る。

  残った無言の六人。俺は五人の服装や荷物を見る。途中で取り替える物を品定めする。

  運動靴を、長靴かもっと頑丈な靴に。リュックとペットボトルをもっと大き目のに。黒い長袖シャツ。帽子。白い服は懐中電灯に当たると目立つ。弓矢は置いていってもらう。戦いに行くわけではない。ロープは腰に巻いといてもらう。

  まぁ、後は歩きながらだな。と俺は考えてた。

「なぁ、今まで何人ゾンビを殺したんだ」

  信長に聞かれる。

「百体位かな」と少な目に答える。信長は馬鹿にしたように笑う。俺は問い返さなかった。信長の舌打ち。

  無言の時間。俺は気にしない。


「おい。なんか注意とかないのかよ」

  と再び信長。無言の時間に耐えられないのだろう。

「暗くなったら屋外では懐中電灯の灯りをずっと足元に照らすようにお願いします。でないと人間にバレてしまうから」

「別に出逢ったらやっちまえばいいじゃねぇか」

  信長はニヤニヤと笑いながら煽る。

「もし人間に出逢ってしまったら目を向けずに避けてください」

「逃げるってのか?」

  信長の返事。

「目的は生活用品の調達です。余計な体力も危険な目もあわせたくないです」

「お前があいたくないだけだろ」

  信長の言葉にミズホさんが加勢してくれる。

「私は危険な目にあいたくないわ」

「なら、来るんじゃねえよ」

  信長の返し文句。ミズホさんは黙る。俺も黙ったまま。相手にしても仕方ない。


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