全ての部屋を確認し水も貯めた。誰も居なかったし、人が居た気配も無かった。残るは屋上。ドアノブに血が付いていた。ドアを開ける。志織に声を出してもらうも返事は無い。
「朝になってから見よう」
なんだかんだ二時間も経っていた。
志織も疲れているはずだ。病気になったら心配。荷物を五階まで持ち運ぶ。
手の皮が剥けていた。破れた皮膚から出た血がついた。志織に感染するかもしれない。次から軍手が必要だと頭に入れた。
廊下の窓を開け下を見る。動きの早いのが人間。動きの早い発光色を探す。見当たらない。
真向かいにある建物の二階以上を探す。動きの遅い発光色は見つかる。
けっこういる。陰に隠れると発光は見えなくなる。俺には壁の向こう側にゾンビや人間が居るかは分からない。
空にはオーロラが揺れ動いていた。画像では綺麗なのに現実は異様だった。世界の終わり。そんな不気味な夜空に感じた。
たとえゾンビが居なくなっても天変地異が起きれば生きるのは厳しくなる。気温や四季は今まで通りじゃないと覚悟した。凄く寒くなるかもしれない。凄く暑くなるかもしれない。津波、地震、流行り病。ゾンビ以外に得体のしれない生命体もいるかもしれない。宇宙人の襲来。どれもこれもあり得る世界になった。
ゴキブリや蚊もゾンビだったら?草木は?猫や犬。鳥、魚、動物園は?
分からない事だらけだ。
川の水が汚染されていたら?原子力発電所。ガス精製所。ガソリンスタンド。都会は危ない場所があり過ぎる。ここに居ては危ないかも。だが田舎には食料が都会より少ない。どちらがいいのか分からない。
一長一短。という熟語が頭に浮かんだ。
救助は絶望的だと諦めていた。救急車やパトカーのサイレンが何も聞こえない時点で。
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