ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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小説.71

公開日時: 2021年1月12日(火) 08:58
文字数:1,001

  都市の大型駅。地下四階までホームがある。が三階から下は水没していた。

  水の中でも俺は大丈夫。ただ肺や胃に水が入ると、あがって身体から水を出すまでの間、気持ち悪くなり気が遠くなる。気を失った事はないが、イヤな気分は拭えない。


  ゾンビ発生から二回目の夏の始まり。缶ジュース、ペットボトル、缶詰。どれも暑さで発酵しパンパンに膨らんでいた。都会で住むのを諦めて地方に行く事を決めた大きな要因。


  水の中なら大丈夫かも。という志織の考えで地下鉄のある駅に向かった。

  地下のホームは暗く、ゾンビは居ない。が、志織が言うには、暑くはないが湿度は高く、なんとも言いがたい腐臭が漂ってるらしい。

  駅の案内図で地下ホームの販売店の場所を覚える。

  水は、冷たいと志織が言った。ならば腐ってる可能性は少ないだろう。

  暗闇とゾンビ。そして水の中。最悪のシチュエーション。でも俺なら大丈夫。と覚悟を決める。


  フルフェイスのヘルメットをかぶり、瓦用の接着剤で隙間を埋める。首回りに何重にもビニールテープを巻いてもらい、電線コードを引きちぎり腰に巻く。消火ホースもあったのだが、途中で引っかかるとイヤなので細い電線コードにした。


  たくさんの物が浮かんでいる。志織が、物凄く臭いと言う。多分、死体のせいだ。一気に水没したのでないから物はその場からあまり動いてないはず。

  自販機も運びたいがまず厳しいだろう。


  浮遊物をどかしながら潜るもヘルメットが浮き輪代わりになり潜れない。誤算。一旦上がりヘルメットを脱ぎ水中メガネを着ける。

  この腐ってる水を呑み込むのにしばし躊躇する。下の水の方が腐ってなさそうと判断し、息を止め階段を降りながら潜る。

  水中。鼻から吸う。口を開ける。胃や肺に水が入るのが分かる。貧血のような感覚を感じる。


  階段を降りた水の中の地下鉄。白黒濃淡に見えるが綺麗だった。

  軽い物は浮かんでるが、水さえなければ終電後の電気を消した駅みたいだった。懐中電灯を点ける。届くか分からないが、志織の方に向けて大きく円を描く。

  ゾンビが来たり、俺が危なかったり、引き上げて欲しいサインは決めてある。

  からまないようにロープを充分に引っ張る。電線コードで良かった。消火ホースは多分、水に浮く。

  ゾンビもいない。動きがあるのは俺だけ。目当てのコンビニ。自動ドアが閉まってる。中は手付かず。宝の山。

用意していた網袋に飲料水の缶やペットボトルを片っ端から詰め込む。取り放題だった。


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