ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
sadojam

現実.136

公開日時: 2021年4月7日(水) 09:53
文字数:981

窓の下に張り付き聞き耳を立てる。戦車は次々と砲弾している。砲弾の音が聞こえなくなるまでその場を動かない事にした。


ポピュレーター達は叫ばない。奮起の咆哮や恐怖の悲鳴をあげない。哀しみの涙もない。リアルな戦争を知らないが思ってたよりも静かに殺し合う。

パーティクルを奪い合う。奪い合うと思ってるのは俺だけで、ポピュレーターはただ回収してるだけなのかもしれない。


パーティクルを回収する機能を持つ個体がポピュレーター。AZの依り代である地球の悪化を防ぐ為にAZはパーティクルを解放した。悪い菌である人間の除去。だが全滅させるわけでもない。必要悪。定期的に増殖した人間を削減する為に。

俺はポピュレーターを人間と同じようにみていたが、別物なのだ。


志織はどうだろうか?俺は一緒にいたい。でも志織とはまだ一度も会っていない。生きてると信じてる。信じ切ってる。

現実を直視したくないせいで、思考が今の現実とは違う思考になる。

考えるべきは、これからどうするか?分からない。


静かになるが五分そのまま動かず。窓から覗き、耳をすます。裏通りなので分からない。戦車のキャタピラ音や車のぶつかる音は聞こえてこない。

俺は立ち上がり屋上へ向かう。外の景色はまだ変わった事は見えない。


仕方なく、地上に降りる。神経過ぎる程身を隠しながら表通りを覗く。赤色の発光はほとんど居ない。数人。戦ってるポピュレーターは五十人くらい。

散乱した死体。二百人は死んだか。車を投げつけられる。気付かれた。俺は逃げる。相手がどれ位強いか分からないから後ろを振り向かず逃げ走る。


気付いた頃には何もない大きな道路。この辺りなら隠れる事が出来ない代わりに、遠くまで見渡せる。振り返ると誰も居ない。高くジャンプし遠くを見渡すも誰も居ない。敵は居ないが味方も居ない。武器もない。


転がってる死体は腐食し始めている。新しい死体はない。


逃げてしまった事に罪悪感はない。弱者の強さにかまけてるのか?いや、勇気と無謀の差が俺には分かってるだけだ。本当か?慎重と思いながら臆病なだけでは?

顔は激戦区を向いてるも足は動かない。一番は俺が生き残る事。志織は二の次か?そんなことはない。


悪いクセがまた浮き出る。思考を放棄する。それではダメだ。とりあえず。とりあえずだ。とりあえず何をすべきか?


思い付く。パルやトニと合流。


足が動くまで少し時間がかかった。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート