ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.104

公開日時: 2021年3月11日(木) 09:32
文字数:1,418

「お前の役目はなんだ?AZになんと聞いた?」

ダビデのしつこい位の同じ問い。多分凄く重要な事なのだろう。だが本当に分からない。

「思い出せない」

思い出すも出さないもない。一瞬、記憶を失っただけ。本当に何もなかった。

嘘をつこうと思った。志織を守り志織と共に行動する事が役目だとAZから聞いた。

そう思った瞬間、それが本当にAZから言われたように思えた。

俺の感情が表情に出てた。

「思い出したか?」

「志織を守り志織と共に行動する事。そう嘘を思い付いた瞬間、本当にAZに言われたように思いました」

何故かそのまま本当の事を言ってしまう。嘘をつくのがめんどくさかった訳ではなく、本当にそう言われたと今では思ってる。不思議だ。そう思い込んでるのかもしれない。俺は無意識に自分にもウソを真実と信じ込んだのか?


「AZは何故?」

俺は思った事を口に出した。同時に同じ台詞を同じテンポでダビデも口にした。続けようとした言葉は、俺にそんな役目を?だ。


知らない女性は少したじろく。

俺の考え。「気まぐれ?」と呟く。

知らない女性も同じ台詞

「気まぐれ?」と呟いた。


俺は別にダビデの思考を先読みした訳ではない。自分の思った事を口に出したまでだ。それなのに女性はそっくり同じ台詞を重ねた。


「志織は隣の部屋へ」

ダビデの言葉に志織は素直に従う。


「私はダビデ。この部位を統括している。お前はどの部位なのだ?」

「志織が部位だとしたらそこに出来た新しい部位だと思います」

俺の答え。

「志織が作ったのか?AZが創ったのか?」

俺は分からない。

「両方」と、答えてみた。言ってみて本当に両方だと思える。

俺は思い込みたいのか?でもこんな思考回路は初めてだった。言葉にした途端、事実と思える。

「火が出る」と指先を誰も居ない場所に向ける。変化無し。ダビデは俺の行動を無視する。


他に何か聞いたか?と質問されると思った。

「他に何か聞いたか?」

ダビデが言った。俺は首を振る。

思考を予測出来るのか?いや、これは俺の思考か?操作されてないか?今までとは明らかに違う。変わった事。俺が首を斬られた。志織がシェーリーになった。なにかしら関連性がある。だがそんなに変わるものなのか?


「まだ色々と質問があるが時間がない。行くぞ」

ダビデが言い部屋から出て行く。


俺の予想はアメリカ。だが当たりなはず。確信ではなく、誰かに教えてもらった気がする。未来を知ってるが未来の記憶を失った感覚。出来事が起こる瞬間に思い出してく感じ。


ダビデと入れ替わりに志織が入ってくる。色々と質問したいが志織の言葉を待つ。

志織は怒ってるの悲しんでるのか、どう思ってるのかを知りたい。その予想は分からない。


「アメリカに行くわ」

志織の言葉。怒りも失望もない。仕方なく行く。という気持ちでもない。

ただやるべき事をやる決意の気持ち。もちろん俺は志織と共にどこでも着いて行く。志織を守る。志織と一緒に居る。

それだけは俺の変わらない想い。決意。覚悟。


「どうやってシェーリーになった?」

俺の質問。どうしても分からない。

「ここに即身仏がたくさんあったのよ」

志織は答えた。それで納得した。ここにはたくさんのパーティクルを詰め込んだミイラがあったのだろう。それを知ってるのはダビデ。そしてダビデがトニ達にここに連れてくるように命令したのだろう。


トニとパルは嘘をついていた。志織を騙していた。だが怒りはなかった。志織が怒っていないから。志織が怒っていたら俺も怒っていただろう。

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