デパートの立体駐車場の屋上から、隣のビルに飛び移り、そこを今夜の休み場所にする。
都会まではまだまだかかる。それでも三浦家から出て二週間は生活必需品を集めながら歩き続けた。
タオや俺みたいなヤツには出逢わなかったし、人間のグループにも逢わなかった。それなりの緊張感と覚悟を決めて慎重に移動していたのだが、杞憂に終わった。もちろん安心はしていないが。
二、三人の人間や一人行動の人間には出会うが、誰も彼もヒドくやつれている。誰もがその日暮らし。生き延びるだけの毎日に嫌気がさしている。かといって自ら死ぬ勇気もない。
そんな雰囲気を誰もがまとっていた。
俺は昼間の明るい時に散策出来る。以前みたいに簡単には見つからないが、それでも食料は見つけ出せる。時間と体力と腕力だけはたっぷりある。鍵のかかって入れないマンション、アパートはまだ多い。
最悪、いざとなれば、また水没した地下鉄や地下街を探せばいい。
都会か田舎か。どちらがいいのか未だ分からない。
変わらないのはゾンビと太陽とオーロラ。草木。そして俺達。
志織は携帯電話で小説を書いている。まだ俺には読ませてくれない。早く読みたいのだが仕方ない。
俺は、屋上から下を見下ろす。暗くなるとゾンビの世界から人間の世界へ変わる。
俺は線路の方向を確認し、地図を広げる。
ふと思い出した言葉が浮かぶ。[人生は死ぬまでが旅の途中]だと。
考える事は山ほどあるのだが、どれも行き止まりの分からない事だらけ。考えても仕方ない。やる事がなくなる。
小説の続きを久しぶりに書く事にする。
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