交番から出る。荷物は何も増えず再び荷台を引きながらまた色々考える。
生身の人間である志織が居るから生きるのは大変。だが志織が居なかったら俺は多分自殺していた。俺だけなら目的は無い。俺の目的は志織が安全に暮らせる場所探し。
どこか人間が安全に暮らしてる場所を見つけるのを目的としてる。
凄い数のゾンビが集まってる場所にきっと人間が居るはずだ。人里離れた田舎か?やはり刑務所なのだろうか。高い壁があり、時給自足出来る土地もある。だが、ゾンビの身体の俺を受け入れるのは相当厳しい。そもそも俺にはゾンビが必要だ。
小さな島とかも考えたのだがゾンビは水の中も平気だ。いつかは辿り着く。地下施設とか。地下鉄や駅の地下はどこも水没していた。
「ここら辺りはあまりゾンビが居ないみたいね」
志織の声で我にかえる。
「一回リセットする?」
リセット。ついて来るゾンビを減らす事。
「十体残そう。どれ残す?」
俺は言った。
「カラー君達は残して…あとはアレとアレ」
志織は若い男が着る服を着ているゾンビを指差す。
俺はゾンビを置き去りにする為、少し走り荷台を置き、急いで雨ガッパを着込みパイプを掴む。それからゾンビに近付き次々と突き刺していく。あまり強くやると俺の肩が外れたり、手の皮が剥けたりする。逃げようとしてるゾンビの後頭部を刺す。そこが一番の急所。頭は硬い。身体の真正面もアバラ骨で硬い。
丁寧に確実に刺していく。捕まれないように気をつけるのではなく、血が付かないように気をつける。自分を見る。返り血が付着していた。雨ガッパを脱ぎパイプと共に藪に投げ捨てる。手や肩、関節を確認する。大丈夫だった。
これで当分静かになるだろう。全部殺すと人間に出逢った時に困る。良い人間ならいいが、たいがいは荷物を奪おうとする。
「志織も食事にするか?」
ゾンビは喰べ尽くすまでそこを動かない。ちょっと殺し過ぎたか。こういう時に限って人間に出逢ってしまう。
「私見ちゃったから食欲ないなぁ」
「だからいつも見るなって言ってるでしょ」
「つい見ちゃうのよねぇ」
志織の声と共に缶詰を開ける音が聞こえた。強くなったのはいい事だ。志織もなんだかんだ言いながら食べる。
「野菜もちゃんと食べろよ」
俺は言った。
そろそろ俺の足に炎症が出来る頃だ。ずっと歩き続ける事が出来るのだが、足の筋肉が炎症を起こす。時間が経てば治るのだが時間が必要。水の補給と、着替えの服も必要。
「スーパーかコンビニがあったら休もう」
俺は声をかけた。
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