ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.140

公開日時: 2021年4月11日(日) 10:04
文字数:998

景色がビル群から整然と整理された住宅街に変わってくる。日本と違い家一軒辺りが大きく、家と家の間の道路も広い。屋上から屋上への移動が困難になる。その代わり、高い建物がなく全体的に遠くを見渡せるようになった。

出来る限り屋根をつたい移動する。登り降りをするのが上手くなった事に気付いた。身体の動きと目の動きがついていけるようになった。

高くない屋根から頭から落ちても慌てる事なく反転し足から着地でき、なおかつ次の移動まで考える余裕もある。忍者みたいな感じだ。


広範囲に赤く光ってる箇所を見つけた。味方が多い場所。その中に志織を見つけた。たくさんいるポピュレーター達の中から吸い込まれるように志織が目に入った。一瞬、目を疑い信じられなかった。血まみれだが間違いなくあれは志織だ。


志織も俺に気付きチラリと剣を振った。明らかに余計な動作。

俺は身を半分隠し志織を待っていたが、志織は俺を見る事なくひたすら戦っている。俺の方から近付くべきなのか?と思い近寄る。


志織ではなく、近くにいた味方のポピュレーターが俺の方にやって来て言った。

「汚い格好してるから来るな。だとよ」

それから持ってた剣を俺に投げて渡し踵を返した。俺も血まみれで汚れている。俺は全く気にしないし、気にする余裕もない。

志織は俺に対して、汚れた格好を見られたくない。その意識は嬉しかった。

志織には悪い気はするが、目は志織から離せなかった。身を隠しながら静観する。俺も強くなりたい。つくづく思う。ずっと逃げてばかり。無意識に思ってたのか、情けなさが込み上げてくる。


生き延びたい。強くなりたい。志織と生きたい。志織を守りたい。

志織が強くて遠くにいってしまったようで少し怖かった。だから会いに行かなかったのか?そんな事すら思ってしまう。

無意識に感じてた事や、閉じ込めてた想いが溢れでる。


持たされた剣を振る。軽く感じる。殺す事には躊躇はない。だが殺されるかもしれない。それが戦う事を全否定する。


志織。横にも後ろにも目がついてるかのように、周りを把握している。

背後の敵を見ずに突き刺し、斬りつけ、攻撃を避ける。あの背後への突き刺し方や避け方は当てずっぽうではない。気配で分かるのか?


誰も襲いかかる時に誰も声を発しない。傷つけられても声を出さない。剣や鉄の棒がぶつかり合う金属音。力の入った足音。


「そっちに四人」志織が大声をあげた。俺の方に四人が向かってやって来る。

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