ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.54

公開日時: 2020年12月25日(金) 08:00
文字数:1,036

  たまに信長がゾンビの頭めがけてバットを振り回す。ちゃんと加減はしてるのだろう。血しぶきが飛ばない程度の力で振り回している。

  俺はそのままにした。信長を見た他の人間は決して近寄らないだろうと判断したからだ。

「最初はスポーツ用品店」

  とスポーツ用品店を指差す。目的はゴルフバッグ。あるといいのが登山バッグだが登山バッグは期待はしない。

  信長は文句を言わない。武器にするバットやゴルフのドライバーとか欲しいのだろう。

  五個のゴルフバッグを用意する。リュックは一つも無かった。

  信長は案の定、自分のゴルフバッグに選んだゴルフのパターやドライバーを詰め込んだ。ゾンビ殺しは俺に任せろ。というように。

  どの店舗も空だった。民家を中心に家探しする。信長はあまり興味がなく、適当に家探し。たいして収穫はない。


  三時間経ち、拠点に戻る。窓からミズホさんが覗いてる。後で注意しなくてはならない。他の人間に見られる可能性が高い。信長もその事に気付いたようで舌打ちをした。

  信長は役に立つ。でもツトムさんは役立たずだと見切った。三浦家の中では役には立たないのだろう。


  部屋で集めた物を仕分けをし、夜通し歩く事を説明する。使わない物を置いてく。


  俺はツナギとヘルメットに着替える。信長が、クソ暑いだろうが。と笑う。俺は、暑い。と答えとく。信長は更に笑う。

  気分良くさせておく。人間に出逢った時に気分が乗らないと動かないかもしれない。


  懐中電灯を点けなくてもオーロラと満月の明るさで外は大丈夫たが、店内や屋内では懐中電灯は必須。


  ゾンビのうなり声だけの静かな世界を六人黙ったまま歩き続ける。たまに信長がゴルフのドライバーでゾンビの頭をぶん殴る。パターは気に入らないらしい。一回使っただけで他のパターも全て捨てていた。

  明るい発光が横に広がっている。多分、人間で複数居る。俺は止まった。信長君。と声をかける。緊張が伝わったのか信長もおとなしく従ってくれる。

  俺は信長に人間がいる方を指指した。信長は俺達に、待て。という手振りをし、慎重に近寄って行く。

  俺は他の皆に、逃げ道を指差す。ヨウジ君が、気付かず何かを蹴っ飛ばしたみたいだ。大きな音が響く。身を隠す。信長が俺達を睨む。


  向こうの人間が気付き、隠れずこっちを凝視する。

「悪りぃ、悪りぃ」

  と信長が立ち上がり両手を上げて言った。

「すぐ立ち去るからよ」

  と後ずさりする。向こうの人間は何も言わない。近寄りもしない。多分、大丈夫だろう。

  違う道を歩く。信長が悪態をつく。俺も他の人も黙ったまま。


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