ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
sadojam

現実.55

公開日時: 2020年12月26日(土) 08:43
文字数:1,147

  本当は俺が先頭に立ちたかったが、信長が先に進む。ゾンビを押しどかし、時には頭を殴って進む。

  押しどかしたゾンビは、俺が近づけば逃げるのだが、頭が曲がったり目が潰れたゾンビはその場に倒れる。倒れたゾンビは起き上がろうとあらゆる所を掴むので危ない。同じ道だが信長の通った場所を通らないようにする。

  それが信長の気に触ったらしく、片っ端からゾンビをドライバーで殴りまくる。

  感染しちゃえばいいのに。とミズホさんが小さな声で悪態をつく。俺はうなづくだけ。でも信長みたいな人ほどヘマをしない。自然とコツを知っているのだ。


  高い建物が見え始める。次の町に来た。俺は、休憩がてら望遠鏡で眺める。高いビルの真ん中辺りにチラチラと灯り。懐中電灯。暗いから小さくても分かってしまう。皆にも見せる。

「決して、窓の方に灯りを向けないように」と注意を促す。


  発光体は多い。この高台から俺が見ると、地上に星が散らばってる感じに見える。けっこうな数。強い発光も、固まってる発光も多い。ビルが多いほど人間も多いしゾンビも多い。そんな傾向だと思う。

  リスクの高い割には収穫は少ないだろう。まだ夜明けまで数時間。

この町は回避しよう。と皆に言ったが信長は反対する。

「次の場所も回避するんか?」と。

  それは行かないと分からない。と俺は答える。俺一人なら問題無いが、五人連れではとても守りきれない。


  ゾンビだけならまだしも人間にも注意しなければならない。そんな事を言ったが、ミズホさんも、人間なら大丈夫でしょ。と答えた。

  歩き続けて、ただ歩くだけの時間に疲れてるのだ。信長がニヤリと笑う。

「多数決にしようぜ」

  こういう頭のキレはある。多数決はヨウジ君と俺以外が手を挙げた。

「なら朝方まで探索し、この町で昼を過ごし帰ろう」

  俺は言った。

「あの場所と、あの場所。あの場所以外を探索」

「なんでだよ」と信長。

「人間がいるから」

  俺の答えに信長は珍しく黙ったまま。何かを考えてる。何を考えてるかまでは分からなかった。


  既に何人か人間を見かけてる。若い男が多かったし、動きもゾンビに慣れてるようだった。他の場所の人間のほとんどが単独行動。少しは安心出来る。


「こっちに商店街がある」

  と信長が言い勝手に進む。どの人間も考える場所なので期待は出来ない。

  それを言っても無駄だろう。信長は相変わらず、見かけたゾンビをドライバーで殴り倒してる。それが唯一の救い。他の人間への牽制になってるはず。

  商店街はゾンビが多い。ほとんどの店舗は入り口が壊されている。

  三階建てのスーパー。ここ見ようぜ。と信長。表に二人見張りをしてもらう。ヨウジ君は怖がる。信長はサッサと店内に入って行く。店内は信長と俺とヨウジ君とミズホさんで物色し、他の二人に見張ってもらう。

懐中電灯をあまり点けないように注意する。


読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート