本当は俺が先頭に立ちたかったが、信長が先に進む。ゾンビを押しどかし、時には頭を殴って進む。
押しどかしたゾンビは、俺が近づけば逃げるのだが、頭が曲がったり目が潰れたゾンビはその場に倒れる。倒れたゾンビは起き上がろうとあらゆる所を掴むので危ない。同じ道だが信長の通った場所を通らないようにする。
それが信長の気に触ったらしく、片っ端からゾンビをドライバーで殴りまくる。
感染しちゃえばいいのに。とミズホさんが小さな声で悪態をつく。俺はうなづくだけ。でも信長みたいな人ほどヘマをしない。自然とコツを知っているのだ。
高い建物が見え始める。次の町に来た。俺は、休憩がてら望遠鏡で眺める。高いビルの真ん中辺りにチラチラと灯り。懐中電灯。暗いから小さくても分かってしまう。皆にも見せる。
「決して、窓の方に灯りを向けないように」と注意を促す。
発光体は多い。この高台から俺が見ると、地上に星が散らばってる感じに見える。けっこうな数。強い発光も、固まってる発光も多い。ビルが多いほど人間も多いしゾンビも多い。そんな傾向だと思う。
リスクの高い割には収穫は少ないだろう。まだ夜明けまで数時間。
この町は回避しよう。と皆に言ったが信長は反対する。
「次の場所も回避するんか?」と。
それは行かないと分からない。と俺は答える。俺一人なら問題無いが、五人連れではとても守りきれない。
ゾンビだけならまだしも人間にも注意しなければならない。そんな事を言ったが、ミズホさんも、人間なら大丈夫でしょ。と答えた。
歩き続けて、ただ歩くだけの時間に疲れてるのだ。信長がニヤリと笑う。
「多数決にしようぜ」
こういう頭のキレはある。多数決はヨウジ君と俺以外が手を挙げた。
「なら朝方まで探索し、この町で昼を過ごし帰ろう」
俺は言った。
「あの場所と、あの場所。あの場所以外を探索」
「なんでだよ」と信長。
「人間がいるから」
俺の答えに信長は珍しく黙ったまま。何かを考えてる。何を考えてるかまでは分からなかった。
既に何人か人間を見かけてる。若い男が多かったし、動きもゾンビに慣れてるようだった。他の場所の人間のほとんどが単独行動。少しは安心出来る。
「こっちに商店街がある」
と信長が言い勝手に進む。どの人間も考える場所なので期待は出来ない。
それを言っても無駄だろう。信長は相変わらず、見かけたゾンビをドライバーで殴り倒してる。それが唯一の救い。他の人間への牽制になってるはず。
商店街はゾンビが多い。ほとんどの店舗は入り口が壊されている。
三階建てのスーパー。ここ見ようぜ。と信長。表に二人見張りをしてもらう。ヨウジ君は怖がる。信長はサッサと店内に入って行く。店内は信長と俺とヨウジ君とミズホさんで物色し、他の二人に見張ってもらう。
懐中電灯をあまり点けないように注意する。
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