ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.148

公開日時: 2021年4月19日(月) 08:49
文字数:997

前の世界。遥か彼方の記憶。前世のような錯覚が起きる。

これといった趣味はなかった。大学は入っとけと親に言われて入り、バイトをし、友達と遊ぶ。それ以外はほとんどうろ覚え。それだけ薄かった。って事か。

志織が居なかった。何かにここまで固執した事はなかった。ここまで必死になった記憶はなかった。

志織が居る世界の方がいい。それだけは言える。


パルが立ち上がった。その気配で現実に戻る。俺も立ち上がる。ダビデをなんとかしなければならない。


「ダビデにやられるしかないのかな?」

俺は聞かずにいられないので口にした。

「まぁ焦っても仕方ないさ。そのうち良い案が出てくるよ」

トニは軽い。俺が慎重し過ぎるのか?

「カーリーのデメリットは何だと思う?」

俺はメゲずに聞いた。志織の書いた小説を思い出す。何かしら必ず弱点はあるはずだ。頑強な強さが裏から見たら脆弱な弱さにもなるからだ。

「ずっと孤独だわ」

志織が答えた。そう。AZの元に戻れず、近くに誰も近寄れない。だがダビデは孤独の辛さを知らない。分からない。


「友達に頼むのは?」

エイやシンは志織の友達だと書いてた。

「多分、助けてはくれるとは思うけど連絡手段が無いわ」

「あの小説のようにいかないかな?」

「ダビデには無理ね。孤独の怖さをまだ知らない」

俺はため息を吐いた。と同時にパルが、敵だ。と言った。パルの視線の先にたくさんの敵。


次から次へと敵は来る。蛾が明るい所に集まるように。そして近付けば炎に焼かれるように地面に倒れていく。


やっと明るくなりライフルが役に立つようになった。偶然か分からないが避ける敵も何人かいた。他のポピュレーターよりも明るい敵も居る。強いって事だ。それでも志織に倒されていく。


ずっと戦っている。肉体的な疲れはない。筋肉痛や傷付けられた痛みもない。身体の回復力が遅くなる。あとは集中力が低くなる。くらいか。

志織達の戦い方をずっと観ているだけで、自分も戦闘をしてるような気分になる。


志織は敵の攻撃をかわし反撃する。たまに不安定な足元でグラつくくらい。

志織の圧倒的な強さ。ダビデはもっと強いのか?ダビデから逃げる事を考えるなら倒す事を考えた方が早い。そう思える程の強さだった。


俺はライフルで遠くの敵の口の後ろ、松果体と、近くに来る敵の足元を狙い定めて引き金を引く。それだけしか考えられなくなる。


気がつくと暗くなり、あっという間に一日が終わる。でも戦いは終わらない。

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