気が付き頭をあげた時には、周り全てが眩しく光っていた。光の中に俺はいた。AZの中か?と思った。不思議と怖さは感じなかった。
「志織?」
俺は言った。人影。目の前に誰かが居る。
「私よ。ダビデは死んだわ。AZから何か聞いた?」
俺は首を振る。AZの事は記憶にない。無意識に頭を刺したまでは分かる。刺した行為は俺の意思だと思う。
「志織がカーリーに?」
「ちょっと待ってて」
目の前の人影が遠のき、明るさも弱まっていく。
「志織?」
俺の手や腕が見え、周りが見え始めた。ここはビルの屋上だった。真下を覗く。激戦区近く。向こうのビルに鳥が飛んでいった。
死んでなかった事に安堵する。嬉しさが破裂したかのように込み上げてきた。
俺達は生き延びた。ざっと身体の隅々まで意識する。多分どこも壊れてはない。不自然なとこがないか、もう一度周りを見渡す。大丈夫。現実世界だ。
志織がドアから出て来た。一気に明るくなり、志織が近付くごとに眩しくて目を開けられなくなる。
「これ」
俺の手の中に渡される。手触りでメガネと分かりかける。眩しさが瞬時に消える。目の前に志織。汚れていたが志織だった。失った腕も回復していた。
「生き延びた」
俺は笑って大声を出した。
「そうよ」
志織の感情の入った声。久しぶりに見る志織の笑顔。俺も久しぶりに笑った事に気付き、志織を抱きしめた。
「ダビデは?」
俺は志織を放してから聞いた。
「箱の中よ。もう少し頑丈にして海の中へ」
「生きてるの?」
俺の問いに志織はうなづく。
「決して死なないわ。意識があるかは別だけど」
「どういう事?」
「カーリーになってしまったら松果体だけは、粉にしようか燃やそうが復活するのよ。そして永遠にパーティクルを吸収し続ける」
「志織は大丈夫だったの?」
大丈夫だから目の前に志織がいる。俺のバカな質問。
「二百メートルくらいの範囲に入らなければ大丈夫」
ここから一キロ先の防波堤の先にダビデの松果体が入った缶を置いたと言った。
それを頑丈な箱に詰めて深い海底に沈める。そうすれば誰も死なない。そしてそれを出来るのはヒロだけ。
志織の説明。
「終わったらどうする?」
「まだ審判の日が来てないわ。ポピュレーターも近くに来てるけど、まぁ問題無いわね」
「それが終わったら?」
「そうねぇ。アメリカのボストンの島に家があるわ。とりあえずそこを拠点として」
そこで志織はニッコリと笑った。
「サーフィンしようか」
俺も笑ってうなづいた。
俺は大きく息を吸い込み吐いた。
「終わったんだね」
「とりあえずはね。まだ審判の日は終わってないけど」
かつどうやってダビデを倒したの?」
「うーん。秘密」
志織は笑って言った。懐かしい笑顔だった。茶目っ気のある笑顔。十代の年齢に相応しい笑顔だった。
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