まだ海上だが、遠くで灯りが見えてた。火の手が上がって明るい。かなり大きい範囲の火事。
パラシュートとナイフ。と言われ、ナイフとリュックを渡される。パラシュートなんてやった事ない。パルが皆が開いたのを見たら、ここを引っ張れる。と教えてくれる。
パルがダビデのパペットを抱え「焦らなければ大丈夫」と言って躊躇なく飛び降りた。
何度も着陸の時を想像する。映画や漫画で観た着陸の場面を思い出す。
下を見下ろす。風圧が思ってた以上に凄かった。下は海。オーロラが反射してる以外、何にも見えない。
「海に着陸したら少しの間、その場から動くなよ。後から降りてくるヤツにぶつかるからな」
トニの大声の忠告。すでに次々と飛び降りている。
「行け」
ダビデの声に俺は飛び降りる。想像してた以上の降下速度と風の音。そして高さが全く分からない。先に飛び出したポピュレーターのパラシュートはまだ開いていない。
思わずヒモに手をかけた。開きたくなるのを我慢する。
上向きになり下が見えなくなる。慌ててさらにバランスを崩しクルクルと視野が回る。
自分がどんな状態か分からない。下に感触。誰かの開いたパラシュートに当たったと分かった。俺は紐を引く。身体が一気に上昇する。
降下スピードが格段に落ちる。上下の感覚が戻りため息を吐く。だが今度は思った以上に横に流されてく。舵取りが分からない。他のポピュレーターから離れてくのが分かる。
海外の火事の灯りが分かるだけでも助かる。だがどこまで離れてくのか分からない。慌てだし始めた頃に海水に浸かる。
パラシュートに包まれながら沈んでくのが分かる。ヒモが身体のあちこちに巻き付く。それでナイフか。と気付く。ナイフで肩紐を切り背中のパラシュートリュックを外す。
海面に顔を出せた。海岸を探し位置を確認する。海岸が視野に入り深くため息を吐いた。急いで泳ぐ。ナイフを落とす。
体力の疲れはないのが救い。志織とパルとトニ、ダビデのパペットが岸で待っていてくれた。他には誰も居ない。
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