志織はどうする?志織の事は志織に任せる。もう十五歳だ。いや、その考えは逃げだ。俺は志織を守るのが俺の目的で生きてきた。ならばここに居るべきだ。だが、あの連中がここに襲いに来るかもしれない。
どうしていいか分からない。やるべき事。志織を守る事。そこに染み入るように入ってくる思考。
それは[やりたい事]
俺みたいなヤツが居る事を知ってしまった。ソイツを知りたい。会ったからといって味方になるワケじゃない。敵になるかもしれない。俺が殺されたら志織はどうなる?リスクがあり過ぎる。だが。それでも。
今まで、やりたい事はなかった。やるべき事だけをやってきた。
「ねぇ、帰ろう」
ミズホさんの言葉で我に帰る。そう。まだ途中。俺はうなづいた。
三浦家に着く。三浦家の人達は大量の荷物を見て、喜んだ。だが俺達は浮かれる気にならない。 ツトムさんが手招きする。
「信長君は二度とここに来ません」と俺から言った。ツトムさんはうなづく。
「バレたのか?」とツトムさん。多分、俺達五人が浮かない顔をしてるからだろう。俺は首を振り、疲れてるからでしょう。と答えた。
志織と目が合う。ツトムさんも気づき、ありがとうな。詳しくは明日聞くよ。と肩を叩き、気を使って俺から離れてくれた。志織が近付く。
「なんかあったのね」と志織。俺はうなづき、起きた事全てを話した。
志織は黙ったまま。そして「仕方ないね」と言った。
「とりあえず、ここにまだ居ようよ。私も小説書くわ。書きたいのよ。ヒロの書いたのより面白いわ」
と笑って言った。気落ちしてる俺を励ましてるのが分かる。俺はうなづく。
「ごめんは要らないわ。本当に仕方ない事だし、皆を無事守れたんだし。そこにスポットを当てるべきよ」
志織が俺の謝ろうとする思考を先読みして言う。
「ありがとう。そうだな。俺は守ったんだ」
「そうよ。三十人の敵に味方を守って無傷で帰って来たんだから。ヒロ、カッコイイわよ]
志織が俺の奮起に付き合ってくれる。
「お、俺はカッコイイ」
俺も無理矢理、奮起する。
「よっ、ゾンビスレイヤー」
志織は笑う。俺も笑う。
そうだな。一生懸命頑張ったんだ。この結果は仕方ない。やっとそう思えた。
「なぁ、俺の小説どうしよう」
「途中で辞めてもいいんじゃない。他に書く事あるの?」
「あんまりない」
「少しはあるのね。それだけ書いちゃいなさいよ。だいたいここ一年なんだかんだ平和だったし。ヤバイ事と言ったら…」
「地下鉄?」
「罠にハマった時?」
同時に言った。俺が言ったのは地下鉄。
「地下鉄?罠の方が大変だったわよ」
「そうだったな。あの時は迷惑かけた」
俺も志織も笑顔になる。そう。俺達はなんだかんだ生き延びてこれたんだ。
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