ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.61

公開日時: 2021年1月1日(金) 13:29
文字数:1,095

  志織はどうする?志織の事は志織に任せる。もう十五歳だ。いや、その考えは逃げだ。俺は志織を守るのが俺の目的で生きてきた。ならばここに居るべきだ。だが、あの連中がここに襲いに来るかもしれない。


  どうしていいか分からない。やるべき事。志織を守る事。そこに染み入るように入ってくる思考。

  それは[やりたい事]

  俺みたいなヤツが居る事を知ってしまった。ソイツを知りたい。会ったからといって味方になるワケじゃない。敵になるかもしれない。俺が殺されたら志織はどうなる?リスクがあり過ぎる。だが。それでも。


  今まで、やりたい事はなかった。やるべき事だけをやってきた。


「ねぇ、帰ろう」

  ミズホさんの言葉で我に帰る。そう。まだ途中。俺はうなづいた。

  三浦家に着く。三浦家の人達は大量の荷物を見て、喜んだ。だが俺達は浮かれる気にならない。 ツトムさんが手招きする。

「信長君は二度とここに来ません」と俺から言った。ツトムさんはうなづく。

「バレたのか?」とツトムさん。多分、俺達五人が浮かない顔をしてるからだろう。俺は首を振り、疲れてるからでしょう。と答えた。

  志織と目が合う。ツトムさんも気づき、ありがとうな。詳しくは明日聞くよ。と肩を叩き、気を使って俺から離れてくれた。志織が近付く。

「なんかあったのね」と志織。俺はうなづき、起きた事全てを話した。

  志織は黙ったまま。そして「仕方ないね」と言った。

「とりあえず、ここにまだ居ようよ。私も小説書くわ。書きたいのよ。ヒロの書いたのより面白いわ」

  と笑って言った。気落ちしてる俺を励ましてるのが分かる。俺はうなづく。

「ごめんは要らないわ。本当に仕方ない事だし、皆を無事守れたんだし。そこにスポットを当てるべきよ」

  志織が俺の謝ろうとする思考を先読みして言う。

「ありがとう。そうだな。俺は守ったんだ」

「そうよ。三十人の敵に味方を守って無傷で帰って来たんだから。ヒロ、カッコイイわよ]

  志織が俺の奮起に付き合ってくれる。

「お、俺はカッコイイ」

  俺も無理矢理、奮起する。

「よっ、ゾンビスレイヤー」

  志織は笑う。俺も笑う。


  そうだな。一生懸命頑張ったんだ。この結果は仕方ない。やっとそう思えた。


「なぁ、俺の小説どうしよう」

「途中で辞めてもいいんじゃない。他に書く事あるの?」

「あんまりない」

「少しはあるのね。それだけ書いちゃいなさいよ。だいたいここ一年なんだかんだ平和だったし。ヤバイ事と言ったら…」


「地下鉄?」

「罠にハマった時?」

  同時に言った。俺が言ったのは地下鉄。

「地下鉄?罠の方が大変だったわよ」

「そうだったな。あの時は迷惑かけた」


  俺も志織も笑顔になる。そう。俺達はなんだかんだ生き延びてこれたんだ。


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