ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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志織の小説.16

公開日時: 2021年2月12日(金) 08:11
文字数:1,451

  奥の方にエイが立っていた。前に見た時より更に重厚そうな雰囲気を身にまとってる。一目見て巨大なミサイルを見上げてるような威力を感じる。

  先に進んでいたトニがエイの隣に立つ。そしてダビもエイの隣に立った。


「裏切ったのか?」パルの言葉に「悪いな」とトニが真顔で言った。


  ポピュレーターを操るには接触しない限りカーリーでも不可能。つまりダビがエイと組んでいたのだ。そしダニがトニを操った。

「要件はなんだ?」

  私は言う。もし私達のパーティクルを奪うのならとっくにしてるし、私達は拠点に入った時点で蒸散してる。カーリーであるエイにはそれくらいの力がある。


「その男をよこせ」

  エイはヒロを見て言う。

「絶対に断る」私は即答する。

「もう必要なかろう。後腐れないようにパーティクルと交換してやろう」

「絶対に断る」私は強く言う。目的は私達のパーティクルではなくヒロだと分かる。だが何故ヒロなのか?


「なぜだ?ただのパペットだろう。貴方が固執する必要はないはずだ]

  私は言いながら考える。ヒロに何かあるはずだ。エイの欲しがる何かが。パルに気配を送る。時間稼ぎをしてくれ。と。

「俺のでどうだ?」

  パルが私の意図に気付いて言う。パルのパペットが一歩前に出る。

  パペットが壊されても本体のポピュレーターは何も変わらない。ただ予備の身体が無くなるだけ。


「ダメだ。その男をよこせ。断るなら殺すなんて甘い事はしないぞ。閉じ込める」


  私達ポピュレーターは、タールコールやコンクリートに埋められるのが一番困る。パーティクルが全て無くなるまで動けない。AZと同じようにただ考えるだけしかなくなる。眠る事も出来ない。何百年もそのまま。

「なんで俺のはダメなんだよ」

  パルが食い下がるが無視される。

「その男をよこすのだ。お前にその価値は分かるまい」


  もう少し考えを練りたかったが仕方ない。私は全神経を集中させる。

  話し方から言い回し。エイとの会話の間の取り方すら気をつける。静かに息を吐いてから言った。

「分かるわ。でも渡したら貴方は終わり」

  下から覗き込むように言った。

「何故だ?」

「何故かしらね。でも私には分かるもの。絶対に貴方はおしまい。貴方はアズィの元へ還る事が決定するわ」

  上から落とすように言う。

「何故だ?」

  間を空けずに言った。

「私、違う人と取り引きしたからよ」

「誰とだ」

  私は一つ息を吸ってから言う。ここが勝負どころだ。

「バイよ。貴方、昔、バイにちょっかい出した事があるでしょ。まだ根に持ってるわ」

「最初にアイツが俺の邪魔をしたんだ」

エイとバイが敵対してるのを知っている。利用しない手はない。エイの意識を分散させる。

「何故、私達が飛行機に乗っていたか分かる?」

  私は言葉をたたみ掛ける。ダビが「嘘だ」とエイに言う。が、エイは無視する。


「ヒロは渡せないわ。その代わり一緒にバイを倒すのを手伝ってあげるわ」

  私は言った。最初の爆弾を落とす。

「お前がバイを倒せるものか」

  エイはせせら笑って言った。

「あら、なんで分かるのかしら?なんでバイが私を襲わずに取り引きしたか分かる?私が力を持ってるからよ。それでも私だけじゃバイは倒せない。貴方が加わるなら…ひょっとして」

  私は自信満々で笑う。倒す秘策があると思わせる。

「私としてはバイだろうがカニだろうがエイだろうが誰でも構わないのよ。でも貴方だけは強引だから少し考えちゃうわね」

「望みはなんだ?」

「ポピュレーターなら誰もが望む大量のパーティクルよ」

  私は腕を組み言った。この間で決まる。


  深く考えさせず、かと言って浅い考えを持たせてもダメ。


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