ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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小説.13

公開日時: 2020年9月28日(月) 07:59
文字数:995

  ゾンビは人間の死体を喰べる。生きてる人間も襲う。自分より弱いゾンビにも襲う。でもホテルの部屋に居たゾンビは互いに喰いあわないでいた。


  俺はお腹が空かない。人間を襲おうとも思わない。食べようとも思わない。俺はゾンビじゃない。


  また今考えなくていい疑問が浮かぶ。頭を振る。やるべき事。ヨシオの部屋にある本やサバイバルグッズを貰う事。それが、終わったら食料と飲料水の調達。拳銃の回収。

  目先の考える事、やる事はたくさんある。


  ヨシオのアパート。鍵がかかっていた。外にあった消化器でドアノブを壊す。軍手をすればよかった。手の平がまた剥けた。

  ヨシオの部屋に入る。何度も遊びに来た部屋。懐かしい。もうあの頃には戻らない。懐古する場合ではない。


  防刃コートに防刃シェラフ。本。頑丈な登山バッグ。スタンガンもあった。防犯ブザーも何個か。リュックに入るだけ詰め込む。


  エアガンとかありそうだが見つからなかった。本が一番役に立つだろう。


  それからヤクザの争った場所に行った。人間は居なかった。ゾンビだけがたくさん居る。一つの遺体に十体くらいのゾンビがしゃがみ込み喰っている。拳銃は見つからない。見あたらない。

  誰も俺を見向きもしないが、近寄っても来ない。が、ゾンビ達が俺の方を向いた。俺は驚き後ずさる。突然後ろから発砲音。と共に俺の背中が一瞬押された。

  背中を撃たれたのだ。痛みが全く無いからよく分からなかった。振り返る。ヤクザがまた俺を撃った。ハゲていて大柄の迷彩服を着てサングラスをはめている。歳は若く見える。パッと見、暴力担当。ボディガードと言われても通用しそうな位、ガタイがよかった。生きてる人間はもう居ないと思い込んでいた。


「ちょっと待ってくれ。俺は人間だ」

  肺をやられたのか、濁音の入った言葉しか出なかった。再び撃ってきた。

額に衝撃があった。


  近くのゾンビはそのヤクザを襲おうとしない。むしろ俺の方に近寄って来る。何故ヤクザを襲わないのか?欲を出したからか?でも拳銃は必需品だろ。志織はどうなる?猫はどこ行った?ヨシオの所に行かなければ。行ったじゃないか?

色々な思考が浮かび上がる。ワケが分からなくなる。ほつれていく思考の糸をたぐる。

  痛みが無い分よく分からない。

目に血が入り景色が濁る。撃たれたのだと確信。

  我に返る。ゾンビの顔が目の前に居る。俺を喰べるつもりだ。それが分かった途端目の前が真っ暗になり、意識が無くなった。


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