ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.18

公開日時: 2020年10月4日(日) 19:36
文字数:1,274

「二人だけか?」

  三十歳位の男が遠くから話しかけた。それ以上は近寄って来ない。

「そうよ」志織が答えた。

「何が欲しい?」男が言う。

「野菜と情報]志織の言葉。

  俺は俺に質問されない限り話さない。志織が答えた方が相手に安心感を与える。

「兄弟か?」男だけが少し近付き尋ねた。

「そうです」

「それは何だ?」

「お酒と煙草」

  男は戻り、他の人達と話す。気配や雰囲気は悪くない。多分受け入れてくれる。全員が近付いて来る。

「怪我してるのか?」俺に聞いてくる。

「三年前に全身に火傷しましたが今は大丈夫です。治療中です」頭を下げながら俺は答えた。

  何人かが道路の方に行く。俺達以外に誰か居るかを確かめに行ったのだろう。

「何歳だ」男は志織に向かって言った。兄弟と言ったのは失敗かもしれない。多分、このグループに若い女が居ないのかもしれない。

「十三」志織は答えた。志織も何かを感じ取ったのか嘘をついた。本当は十五歳。

「お前は?」

「二十一歳です」本当は二十五歳。

[ずっと二人で生きていたのか?」

  志織は頷き、俺は返事をした。

「どこから来た?」

「東京から」

「東京では住めないのか?警察や自衛隊は居るのか?」

  男は俺に聞いてくる。

「どこかしこゾンビと腐った死体だらけでとても住めません。警察や自衛隊も今まで見た事ありません」

  都会には住もうと思えば住める。だが永住は無理だろう。

「聞きたい事はあるか?」

「食料は自給自足ですか?」

「野菜。それに少ないがニワトリと牛がいる」

「野菜を分けていただきたいのですが」

  志織に必要なのだ。生理がこなくなって一年が経つ。ストレスもあるだろうが、明らかに野菜不足。今は大丈夫でもいずれ身体に何かしら影響を与えるだろう。

「野菜ならいいだろう。来い」

  他の男が地面に置いたウィスキーと煙草、お菓子を拾う。

  俺はため息を一つ吐いた。歩きながら質問した。

「貴方の住む所は安全ですか?」

「安全にしたいとは思っている。ゾンビは大丈夫だが悪い人間なら難しいな」

  やけに曲がりくねった道。竹やぶの山に道を作ったのだろう。両脇は竹がビッシリと繁っていた。少し歩くと両脇に五、六体ずつゾンビが鎖で繋がれていた。人間対策だ。ゾンビを持ち帰る理由が分かった。

  道の真ん中に小さなコンテナ。先に数人がコンテナに入りコンテナを叩くとコンテナは動き始めた。

  地面にレール。車輪でゴロゴロとコンテナは動き出す。向こう側で引っ張っているのだろう。

「夜に来られたらダメだがな。それでも充分効果はある。番犬みたいなもんだ」

  男は説明する。多分、この男のアイデアなのだろう。どうやら電気は無いようだ。

  男は察したのか、自家発電機はあるがいざという時にしか使わない。と言った。

「車は?」

  質問し過ぎか?俺は言ってから思った。

  この男は自分のミスや出来ない事を許せないタイプだ。自信はあるだろうが、痛いところを指摘されたくない性格。だから先にゾンビは夜、使えない。という事を言ったのだ。プライドが高い。つまり自分より賢い人を好まない。でも正義感やモラルは人並み以上にありそうだ。だが正義感は時として残酷さや独善主義者に変わる。


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