ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.92

公開日時: 2021年2月26日(金) 10:10
文字数:923

パルと合流する前にトニがシェーリーになった。

「これでクソする心配はしなくて済むな」

と冗談を言う。最後までチョコばかり食べていた。

トニの肌の色は俺やパペットと同じ白くなり、身体能力がパペットと変わらない位に上がる。小太りの身体なのに、二メートル近く跳び跳ねる。動きも素早くなる。二本の木を手を使わず蹴り上げながら登る。

「これで味覚さえあれば最高なのになぁ」

と木の上から周りを見渡しながら大きな声で喋る。身体の動きに慣れている。俺よりも上手い。

これで俺と志織はお荷物になる。いや、そのうち俺だけがお荷物。気分が重くなる。

敏感な志織に気づかれたくないので話題を振る。

「志織はどれ位でシェーリーになるの?」

志織は俺に心配かけさせない為に誤魔化すかもしれないから、トニに聞いた。

「まぁ一年はかかるな。この調子なら」

「最後の審判はいつ?」

「一年後じゃねぇか?」

間に合うかギリギリ。やはり早くたくさんのパーティクルを回収しなくては。


パルの元へ向かいながら、時たまトニが電柱や高いビルに登り遠くを見渡す。

ポピュレーターを何人か見かけるが襲ってはこない。

志織だけ睡眠を摂るので、夜は寝て俺達は志織の食料と飲料水を探し、昼はパルの所に向かって歩く日々。


ゾンビは遠巻きながらも志織目的で付いてくる。が、もうほとんど心配はしてない。人間も行動時間が違う為に滅多に出くわさない。


「おっ、パル居たぞ」

電柱の上のトニが大声で知らせる。あと数時間歩けば合流出来る。ポピュレーター同士はパーティクルが多いと見分けられるらしい。俺には光加減でしか分からない。

トニに、俺の発光はどんなのかを聞いたが、人間と同じ弱い。との答え。


「なんだよ。俺達の事分かってるのに、こっちに来ないじゃねえかよ」

トニが憤然としながら愚痴る。一箇所から全く動かないらしい。パルの居場所は大きな病院だった。


中にはパルしか居ない。ゾンビも居ない。パルもシェーリーになってるみたいだった。

病院玄関から中に入る。壁という壁に子供の落書きのような絵が無造作に貼り付けてある。どれも下手くそだが、その下手くそだからこそ異様に怖い。精神病者が描いたような絵ばかり。

「人間対策だな」

トニが言いながらもおかまいなしに中に入る。

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