ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.76

公開日時: 2021年1月19日(火) 07:47
文字数:935

  志織は廊下に使えそうな物を集めていた。朝方、明るくなる頃に荷台に詰める事にする。

  俺は屋上かベランダで、近辺を見張る。薬にウィスキー。志織の読みたい雑誌。いつでも逃げられるように小物は荷台に詰めた。

  手袋も頑丈な手袋にはめ換えた。石を指で弾く時に素手や軍手だと指先の肉が傷付く。すぐに治るのだが血が出て命中率が格段に下がる。

  漫画では石を指で弾く[石つぶて]で敵を倒すが、あの威力だと指の方がえぐれてダメになるはず。

  スパイダーマンみたいに、ロープで移動するのも着地場所に釘があったり、掴まる場所が安定でなかったり。投げたロープも外れない。


  現実はとてつもなくシビア。


  屋根もあの男のように早く走れない。必ず瓦が踏み壊れバランスを崩す。下手すれば屋根を踏み抜き足がハマる。滑らない靴を履き、体重が十キロ位ならあり得る。俺が下手なだけなのか?


  冬の間、たくさん練習しようと思う。慣れれば大丈夫になるはずだ。落ちても雪なら大丈夫だろうし。

  カンフー映画でよくある、ゾンビの方や頭をつたって渡る事なら出来るかもしれない。

  暇な時は石を指で弾く練習。小石はいくらでもある。そしてバランス感覚を養う為にベランダの手すりで逆立ちをした。目をつぶれば大丈夫なのだが目を開けると、高さの怖さで危ゆくなる。

  落ちた時にどうするか?を考えながら逆立ちする。もし落ちたら、下のベランダのフェンスに腕をかけて…とか。それが掴めなかったら、壁を蹴ってあそこの車の屋根に飛び移る。まだ衝撃があるから、そこで転がるように衝撃を分散し地面に移動する。


  痛みも疲れも感じないから、ひょっとしてこれは映画の世界か、夢の世界かと思う時がある。もう三年も経ってるのに。

  朝になればまた現実だと認識するのだが、真夜中の思考はたまに突飛もなく飛躍する。


  明るくなり俺は廊下の荷物を荷車に詰め始める。古いものは捨てたりと荷物の整理。

  志織はまだ起きてこない。なるべくゆっくりと静かにベランダから登り、志織の寝てる部屋を覗く。発光からの判断でまだ寝てる事が分かる。


  三階ベランダの手すりから飛び降り、二階の手すりに掴まってみる。足をかけられずに、掴んだ腕に体重がかかった。そのまま地面まで着地は出来たが両肩が外れてる。失敗。


  なかなか上手くいかない。


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