ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.21

公開日時: 2020年10月5日(月) 21:16
文字数:956

  ふと、視線を感じ振り返る。痩せ細った若い男が物陰から俺を見ていた。俺は軽く頭を下げた。男は挨拶を返さず引っ込んだ。雰囲気はニートっぽかった。人間関係が苦手で、興味はあっても自分からは動かない。動けない。自分に劣等感を強く持っているタイプ。


  考えてると志織が来た。

「どう?」

  俺が聞こうとした事を先に言われた。

「水も食料もあるし、人間関係もなかなか良好そうじゃないか」

  俺は答えた。

「子供達が凄く平和なのよ。田舎の子供達って感じ。しばらくしたら色々東京のお話をしなきゃならないのよ」

志織は満足そうだ。俺は嬉しかった。

「色々、話を聞かせてあげればいい」

「うん。そのつもり。風呂も入っていいって。外にもあるみたい。皆で一緒に入るのよ」

  皆…子供達。

「露天風呂か。オーロラを見ながらの風呂はいいかもな」

「荷物取って来ないと。どうする?」

  志織は屈託無く言った。ここを気に入ったらしい。


  俺はどうなる?その思いは言葉にしなかった。出来なかった。

「後で取りに行くよ」

  お姉ちゃーん。子供達が志織を呼ぶ。

「行って来なよ」

俺は志織に言った。志織は笑って子供達に向かって行った。

 

  俺はどうしたらいい?


  一緒に食事をするだろう。風呂に入れと言われるだろう。部屋と布団を借りるだろう。医者が見てあげると言われるだろう。部屋の中で手袋は外さなければならない。どう断る?


  思い付きの考え。ここは高台で竹やぶもあり、道からは全く見えない。つまりはここから道の方が見えない。だから小さな見張り小屋を作り、そこで俺は見張りながら住む。食事は少な目にしてもらう。それなら誰にも見られないし、寝なくてもバレない。


  なんだかんだ理由つけて一人で外出しなければならない。摂取と左腕の交換。昨日摂取したから最悪でも六日は持つはずだが匂いがキツくなる。ヤケドのせいで皮膚が。と誤魔化せるが限界がある。


  いつも志織は大丈夫。と言うが、気遣いからかもしれない。匂いはしないから大丈夫。と、これ位の匂いなら大丈夫。きっと後者だろう。


  考える時間はある。とりあえず今夜は手にファンデを塗り、食事は軽く。食べられるが味も分からないし、そのまま左腕に排出される。風呂は遠慮しとこう。


  ある程度の想定をつけた。これ以上は深読みになる。浅はかな考えもダメだが、深読みも良くない結果が出る。経験済みだ。


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