ゾンビサバイバル 【比翼の鳥の物語】

終末世界を少女と二人で生き抜くお話(完結)
sadojam
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現実.50

公開日時: 2020年12月21日(月) 08:34
文字数:1,240

  小説を書く手が止まってしまった。書きたい事と、読み手を意識して書く事は異なる。自分の為に書く。志織の為に書く。大きく違う。

  志織の意見は的確だ。俺は志織の為に書いてるつもりだった。面白い。と満足してもらう為に。それがいつの間にか、俺の気持ちを知って欲しい為に書いてる。俺が満足してる。志織を満足させたかったはずなのに。


  こういうの好きな人にはハマるんじゃないかな。と言ってくれたが、後に続く言葉が浮かぶ。

  私はハマらないけど。と。


  面白い。と言ったのも、客観的に読んだら。との前提で。なら主観的に読んだら面白くない。って事なんだろう。

  考え過ぎる悪い癖。でも当たってると思う


  この後の話も特に大きな話題がない。インチキ占い師も、俺が不思議がった事を書くだけだったし、あとはほとんど俺の苦労話だ。俺がこうして、こうなった。という。


  イヤな気分になると、思い浮かぶ言葉が、やるべき事をやる。思い付くのはゾンビの摂取。俺は、走り出した。自己嫌悪から逃げるように。

  思い切り走っても疲れない。疲れて何も考えない状態になりたかった。

  やるべき事がない時にネガティブになると引きずる。時間があるからだ。


  平穏だと色々考えてしまう。それが調子良い時だと楽しいのだが、一度、自分の弱さと向き合うと、イヤになってしまう。

  早く明日にならないかな。そうしたら、こんな事を考えなくて済む。明日はやる事がある。


  ゾンビの摂取を考える。思考はそこに集中する。周りに神経を張る。逃げるゾンビを川のそばまで誘導し、服を脱いでからゾンビの汚れを適度に落とし、掴まれないよう両手を折り曲げるように折り、後ろ首に噛みつく。喰べ残した身体を奥の方に投げ捨て、身体を洗う。


  帰りは景色を観ながらゆっくりと歩いた。考える事は明日の事。持ってく物。持ち帰る物。大勢で行くだろうからどこに泊まれば最適かを考えてく。


  コンテナハウスの道路前に人影。ツトムさんだった。明日の話だろう。

「今夜に出発だ。必要な物はあるか?」

  ツトムさんは前置きもなく言った。

「懐中電灯位です」

  と俺も余計な会話はせずに必要な事だけを話す。小屋の裏からプロパンガスの荷台を引っ張り出す。

「これは頑丈ですし、たくさん運べます」

「他に必要な物は本当に要らないのか?ナイフとか、ロープとか」

「革手袋ですかね。でも道中探せますし」

「用意する。何か食べたい物があるか?」

「皆さんと同じので大丈夫です」

「そうか。遠慮はしなくてもいいぞ。遠征行くと誰かが必ず死ぬ。行くヤツは好きな物を食べていい事にしてるんだ」

  ツトムさんは言う。そんなに危険だとは思わないが。と思うが顔にも口にも出さない。

「人減らしは今までやってたのですか?」

  俺は言った。

「いや、任せるヤツがおらん。今回が初めてだ」 

  本当か嘘か分からない。ツトムさんの顔からは読めなかった。

「今回はお前入れて五人だ。必要なのは、食料。缶詰中心。調味料。そして灯油。あとは任せる」

  俺はうなづく。

「御飯を食べたら出かける。また来る」

  ツトムさんは帰ってく。


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