「なんか、ごめん」
俺は、多分志織は年齢を言いたくなかったんだろうな。と思い謝る。
「ずっと聞きたかったんでしょ」
志織は笑いながら言った。その横顔は子供。女の子の顔だ。思春期独特の匂いというか雰囲気だった。大人びた感じはしなかった。志織の学生服姿は似合うと思った。
でも思考の読み取りや、感情の読み取りは敏感。感情の起伏をあまり見せない。そもそも滅多に感情が大きく揺らぐ事がないと思う。
退屈とか、つまらない。とかの感情もあまりないのかもしれない。
ただただ生きている。考える時は考えるのだろうが、考えなくて済む時間は何も考えていないのかもしれない。
それは俺も似ている。大きく違うのは、俺は臆病だ。生き延びるのに逃げる方を選ぶ。プライドはない。トニやパルに助けてもらってる。俺が志織を守りたいはずなのに。だが現実には俺一人では無理だと分かってるから守られるのは厭わない。
自分の一貫した思考がない。状況に合わせて変化する。それが良い事なのか、正解かは分からないが、選択してる時点で悪くはないし間違いでもない。と無意識で思ってる。ただ判断に自信がないだけ。
志織と一緒であればいい。志織と楽しく生きれたらいい。他はどう変わろうが、これだけは変わらない。
「凄いなお前ら。退屈じゃねぇのかよ」
トニの言葉で我に返る。多分、五分位誰も口を開かなかった。
俺は一度、何かの考えに夢中になると没頭してしまう。こういう静かな時間は俺は好きなのだが、トニには苦痛らしい。
パルも志織も俺も、必要な事以外を話さない。
「もういい。ちょっと探検してくるわ」
誰も話さない事に痺れを切らしトニは起き上がり出かけて行った。パペットは座ったままなので、何かあればすぐ繋がる。
「そういえば、前に会ったパルと性格が違うんだけど」
俺はパルに聞いた。
「かなり重度の疾患者だったからな」
それでパルの言葉は終わる。
操りこなすまで難しいのか?今のパルキッツアは寡黙で大人しい。電池が止まってる大きな人形と錯覚するほどだ。
辺りは沈黙。
志織は向こうを向いて寝てる。まだ眼を開けて寝てるか分からない。
気持ちの隅に、周りの気配や聞き耳を立てる。神経を張り巡らす。動かないまでも、何かしらやる事はある。
何かあってもこの人数なら安心だ。でも癖でやってしまう。大丈夫だと思っていても。何か起きる確率はゼロではない。
たまに焚き火に薪をくべたり、パルやパルとトニのパペットを見たり。オーロラを眺めたり。明日の事を考えたり、したい事ややるべき事を考える。
そうして時間が過ぎて行く。
明るくなる頃トニが帰って来た。たくさんの本を抱えていた。
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