「不具合か。何の為にAZはヒロを創ったんだろうな」
パルの口が開く。それでAZが消えた事に気付く。
「分からない」
俺は言った。頭の整理が出来ない。その後もパルと少し話すが、パルの言葉が頭に入らず適度に相槌を打っていた。
「おい。大丈夫か?」
パルは気付き俺の顔を覗く。俺はゆっくりと何回かうなづく。だが全く大丈夫じゃない。
AZは確かに存在した。百パーセント信じる。もしパルが口を動かして話をしていたら一抹の疑問は持っただろう。
「まぁどんどん集まってきてるから、いずれは移動するようになる」
パルの言葉にやっと現実に戻る。志織と生き延びる為に逃げたい。
全てはAZの時間潰しの為に創られた。計画的に人間もポピュレーターも。俺は偶然に産まれた。
AZには感謝も恨みもない。志織と一緒に平和に過ごしたい。ただそれだけだ。それにはこの一年。何としても生き延びなければ。
「原子力発電所は安全だよな?」
俺は聞く。そこで戦闘され放射能漏れでもしたら地球は壊れる。
「戦闘は無いが人間も俺達も消滅する」
「なぜ?」
「特殊なポピュレーターしか近寄れない」
「なんで?何かあるのか?」
「そういった場所は自分のパーティクルが消えてくんだ。無条件でパーティクルを吸収するポピュレーターが居るんだ」
AZは当たり前だが抜かりはない。誰もが安全な所でずっと過ごすだけでは、面白くない。ポピュレーターを通じて疑似体験を愉しんでる。
動けない老人がたくさんのモニターであらゆる世界を覗き観ている。ふと、そんなイメージが脳裏に浮かんだ。
「パルはAZと会ったり話したりはあるの?」
「会った事はないが通達はくるよ。脳内にね」
パルは頭を指差して言った。
「会話はないのか」
パルはうなづく。
「AZと会ったり会話したポピュレーターは居るのかな?」
俺の質問は続く。
「さぁ。エイやカニはあるんじゃないかな?」
「エイやカニに逢えないかな?」
「志織がいれば逢えるんじゃないかな?」
「志織ってそんなに凄いの?」
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