意識が戻り目を開ける。眩しい光で目をつぶる。一瞬だけ夢を見たか、記憶が跳んだ気がしてる。薄っすらと片目を開ける。目の前に志織が立っている。眩しい光をまとってる。そして色は赤かった。
俺は慌てて起き上がる。身体に違和感はない。
志織の背後にトニとパル。そして知らない女性。他にも数人。誰もが赤く発光していた。
「何があった?」
俺は尋ねた。志織が落ち着いているのが分かったから、俺も慌てはしなかった。俺の問いには誰も答えない。
「AZには会った?」
その代わり知らない女の質問が返ってくる。目付きが切れ長で唇が厚い。首筋が細く、一瞬クレオパトラを想像した。俺は首を振る。
「よく思い出せ。記憶を思い出すんだ」
知らない女性が再度質問した。大人しそうな雰囲気ではない。闘争心というか戦場にいる雰囲気を醸し出していた。女戦士という言葉がピッタリ当てはまる。
「一瞬だけ記憶が跳んだ気がしただけだ」
真実を言う。トニもパルも落ち着いている。危機感は感じない。身体もいつも通り変わらない。その女性の眼光が鋭い。タオの女性版と思った。
「本気で思い出せ。何を感じた?」
女性は身じろぎせずに言う。
「分からない。なんかあったような」
とりあえず口にする。その女性は必ず俺に何かあったと確信してる口調。
俺が記憶に無いだけかもしれない。
「必ず思い出せ」
女性はそれだけ言った。その女性も志織も眩しく光っている。それでやっと気付いた。
「シェーリーになったのか?」
俺は志織に言った。志織は小さくうなづいた。
なんで?と言おうとした矢先にトニが口を開いた。
「役目破棄はダメなんだ」
「いつから?」
いつから計画した?志織はどうやってパーティクルを増やせた?俺はなぜ首を切られた?色々な疑問が浮かぶが言葉に出せたのは最初の疑問だけ。
「志織が放棄する気だと思ったのは日本に住んだ頃からだな。お前は今までの志織を知らない。志織が何故人間の少ない日本に居つくのだ?答えは簡単に出るだろう」
その女性が答えた。
「ダビ?さん?」
俺は思い出した名前を言った。志織の小説の中で出てきた女性の名前。立場が上のようだった。現実も明らかにトニやパルが従ってる。そして志織も文句は言っていない。
「ダビデだ。志織から聞いてたのだな」
ダビデは確認の為に聞いた感じだった。
「我々の存在はパーティクルを回収する事。役目を果たさないポピュレーターは死んでもらう」
咎めるような言い方ではなく諭すような言い方をしてる。
なんとなく理解してきた。多分、最初からトニかパルか分からないが、志織をシェーリーにする計画。ダビデの命令によって。
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