10度目の転生なので全部占いに従ってみた

ハシダスガヲ
ハシダスガヲ

公開日時: 2021年1月31日(日) 18:30
文字数:2,386

別れ際にお師匠様が私にこう告げた。

「そうだ!神田君明日の喫茶店での件だがな、素直に今思っていることを言えばいい。それで解決するから。大事なのは、自分はこんなことがあったからこうしちゃいけないと決めつけることじゃなくて、今自分はどうしたいのか。本心の自分に聞いて行動することだ」

お師匠様は明日の倉橋さんとのことを言っているのだ。

「……ありがとうございます。肝に銘じておきます」

「今日はいろいろ楽しかったからサービスだ!」

そう言ってお師匠様は社務所へと戻っていった。


私と月見里さんは自転車に乗りその場を後にした。

道中月見里さんが、今日は付き合ってもらって悪いからと私を昼食に誘った。

私はその誘いに乗り、二人で商店街へと向かった。


私は少し落ち着きたかったので、あまり人が来ない洋食屋さんを提案し、そこでお昼を食べることになった。

私はハンバーグ定食、月見里さんはオムライスを注文した。

「今日は付き合っていただいてありがとうございました。お師匠様、何かよけいなことを言っていませんでしたか?」

月見里さんは少し不安そうに私を見つめる。

「いえ、大丈夫ですよ。でもお師匠様は本当に未来も過去も見えるんですね」

「そうなんです!お師匠様はすごいんですよ!」

そう言って彼女はお師匠様との思い出を楽しそうに話し始めた。

彼女が好きなものの事を話しているときの表情は何とも無邪気でかわいらしい。

私は今この時間がもっと続けばいいと思った。

「あの……神田さん?」

「ん?どうしたの?」

彼女は恥ずかしそうに、

「見つめすぎです……」

といってうつむいてしまった。

私は気が付かないうちに、彼女の顔をじっと見つめてしまっていたようだ。


そしてこのタイミングで、料理が運ばれてきた。

月見里さんは料理を見て、「おいしそう!」と笑顔になった。

私たちは、いただきますと言い食事を始めた。

ここのハンバーグはやはりおいしい。

ふと前を見ると、月見里さんが私のハンバーグを見つめている。

「一口食べる?」

「いいんですか!」

彼女は嬉しそうに言った。

彼女は私の皿からハンバーグを一口分取り、笑顔でほおばった。

この幸せそうな笑顔がとても愛らしい。

食事を終え、私たちは店の外に出た。


すると突然声をかけられた。

「あ、先輩!」

振り向くとそこには倉橋さんがいた。

私は少し気まずくなり、「おお……」と言った。

倉橋さんは、私と隣にいる月見里さんを見ると表情が一瞬曇った。

「あの、そちらの方は?」

と倉橋さんが聞いてきた。

私は答えに困ってしまったが、何とか言葉を絞り出した。

「えっと……先生、ですかね?」

絞りだした言葉はおそらく間違っていたのだろう。

倉橋さんは一気に怪訝な顔つきになった。

その空気を感じたのか、月見里さんが私に問いかける。

「神田さん。この方はどなたですか?」

「えっと、高校の時の後輩の倉橋さんです。ほら、月見里さんのところに占いを受けに来ていた」

月見里さんは一瞬間をおいてハッとしてから、

「思い出しました。その節はありがとうございました」

といってお辞儀をした。

倉橋さんもそれを聞いて思い出したようで、

「こちらこそ、ありがとうございました。着物を着てなかったから気が付かなかったです!そういえば先輩と久々に会ったのもを占いの時ですよね……先生ということは、今先輩は占いを習われているんですか?」

と尋ねてきた。

「そうそう。今先生に習ってるんだよ。それで今日ちょっと食事をしに来たんだ」

倉橋さんは驚いた様子で、

「そうなんですね。今度私も占ってくださいよ!でも、どんな占い方をするんですか?」

一番聞かれたくない質問が来た。しかしここでごまかしては、どちらにも角が立つ。

「えっと……タロットカードぶつけ占いなんだけど……」

倉橋さんの頭上に大きなクエスチョンマークが見えた。

それを感じ取ったのか月見里さんがタロットぶつけ占いのルーツを話し始めた。

なんだろうこのカオスな状況は。

説明を聞き終えると倉橋さんは引っかかるところはあるが、理解したような絶妙な表情を見せていた。

私は話題を変えようと倉橋さんに話しかけた。


「そういえば倉橋さんはどうしたの?」

倉橋さんはハッとなって、

「いけない!私バイトに向かう途中でした!急ぎますので、これで失礼します」そう言って彼女は立ち去ろうとした。

私は内心明日の待ち合わせの件が彼女から出てこなくて少しほっとした。

去り際倉橋さんは、

「先輩!明日のお昼に駅前の喫茶店で集合ですからね!」と言ってかけていった。

私は固まってしまった。

当然のように月見里さんが私に聞いてくる。

「神田さん。お師匠様も言われていた、明日の喫茶店の件というのは先ほどの女性との件ですか?」

「え?あ……はい。そうです」

月見里さんは今まで見たことがない表情で、

「ふーん……そうなんですか。ちなみにあの女性と昨日公園で何があったんですか?」

それも覚えていたか。

「いえ、ちょっと……あの、いろいろと、ね……」

なんだか浮気をとがめられているような気分になった。

「へー……いろいろですか……ふーん……」

それから月見里さんはすねた表情をしてしまった。

お師匠様、いや、あいつはこれも見据えたうえでいろいろ話を振ってやがったんだな。

私はお師匠様の実力を身をもって感じた。

いてもたってもいられなくなり、

「明日用事がすんだらまた講座を受けに伺います!それでは、今日はありがとうございました!失礼します!」

そういって私は逃げるようにその場を後にした。


その後家に着き私は明日自分がどうすればいいのか考えた。

お師匠様には、自分はどうしたいのか、自分の気持ちに素直になるということが大事と言われた。

私は1度目の妻との別れがトラウマになっている。

本当に仲が良く、ケンカもしたが幸せだった。それを失うのは本当に恐ろしい。

だが、今私はどうしたいのか。


私は考え事で頭の中がいっぱいになっていた。

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