私はその日朝早く目が覚めてしまった。
倉橋さんとの待ち合わせの時間まではまだだいぶある。
私は一晩かけて一つの答えを出した。
それを今日倉橋さんに伝えに行くのだ。
昼より少し前、私は喫茶店についた。
店内を見渡すと、すでに倉橋さんが来ていた。
私は彼女の前に座り、アイスコーヒーを注文した。
「遅れちゃったかな?」
「いえ、私が早く来すぎてしまったんです。先輩は時間どおりですよ」
そうこうしているうちにアイスコーヒーが目の前に置かれた。
私は意を決して切り出す。
「あのさ……この間の話なんだけど……」
彼女は落ち着いた表情で私を見つめている。
こんなに緊張するのはいつ以来だろうか。
私はアイスコーヒーを一口飲み、
「ごめん。気になる人がいるんだ……だから、申し訳ないけど倉橋さんの気持ちには答えられない」
彼女は力なくうつむいた。
そこから二人の間に沈黙が流れた。
「……わかりました。気になる人っていうのは昨日の人、ですよね」
「……うん」
「先輩、気にしないでください。初めに言った通り、これで先輩の事はきっぱり諦めます。今までありがとうございました」
彼女は微笑んでいた。しかし目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
「あの……」
私が声をかけようとすると、彼女はそれを制止し、「大丈夫です」と言った。
彼女は立ち上がり、私を見つめながら、
「今まで本当にありがとうございました。先輩の事が大好きでした。失礼します」
そう言って彼女は喫茶店を出ていった。
私は一人、アイスコーヒーを飲んだ。
その後、私は喫茶店で時間をつぶし、講座へと向かった。
今日も今日とて、門を開け扉をノックする。
すると着物の月見里さんが出てきた。
「いらっしゃいませ。こちらへどうぞ」と私をいつもの部屋へ導いた。
部屋に置かれた机を挟み向かい合って座る。
「なんだかこの光景も見慣れてきましたね」
彼女は嬉しそうに言う。
「確かにそうですね。毎回楽しみにしてますよ」
「本当ですか!うれしい! ……私も神田さんと会ってから毎日が充実してます。これからもよろしくお願いしますね」
そういう彼女の笑顔はとても可愛らしかった。
「こちらこそ、これからもよろしくお願いします」
「それじゃあ今日は、この間の続きでカー……」
彼女はそこまで言うと、前のめりに倒れてしまった。
私は驚き、声をかける。
「月見里さん、大丈夫ですか?」
彼女はお腹を押さえながら辛そうにうめいている。
「月見里さん!どうしたんですか?月見里さん!」
彼女は苦しそうにするばかりで何も答えられない様子だ。
私は大慌てで救急車を呼んだ。
お読みいただきありがとうございます!
感想等々よろしければお願いします!
ツイッターもやっておりますのでよろしければご覧ください。
https://twitter.com/hashidareal
読み終わったら、ポイントを付けましょう!