10度目の転生なので全部占いに従ってみた

ハシダスガヲ
ハシダスガヲ

第4回 ラッキーストーンは?

公開日時: 2021年1月30日(土) 11:00
文字数:2,146

昼の12時から少し前、私は駅前の喫茶店に入っていた。

ひとまずアイスコーヒーを注文し倉橋さんを待つことにした。

アイスコーヒーが私の前に置かれると同時に、喫茶店の入り口から倉橋さんが入ってきた。

彼女は私を見つけると、軽く会釈をして、私の前に座りアイスティーを注文した。


彼女は私のほうを見て、話し始めた。

「すみません。今日は呼び出してしまって」

彼女は少しかしこまってそう言った。

「いや、どうせ暇だから大丈夫だよ。でも今日は突然どうしたの?」

彼女は少し顔を赤らめながら話し始めた。

「……先輩。あの……私変わりましたか?」

「……ああ、確かに高校のころとはだいぶ雰囲気が変わったと思うよ。眼鏡もしてなかったから、昨日会ったとき気が付かなかったし」

「そうですよね」

彼女は少し微笑み、少し間をおいてから話し始めた。


「先輩、私が初めて先輩と会ったときの事、覚えてますか?」

「えっと……」

私は思い出せず言葉に詰まってしまった。

彼女は少し遠い目をしながら、

「私、当時森野先生に目の敵にされていて、よく理不尽なことで怒られていたんです」と言った。

森野先生とは私と倉橋さんが通っていた高校の先生で、気に入らない生徒がいると何かにつけて怒り出すというとんでもない人だった。もちろん評判も悪く、怒られている生徒を助けたり、かばったりすると今度はその生徒が目を付けられるというあまりにも理不尽な人であった。

「その時に、先輩が私を助けてくれたんです。」

確かにそんなことがあった。私はその時の事を思い出した。


私が放課後帰宅するため、下駄箱で靴を履き替えようとしていると、森野先生が怒鳴る声が聞こえた。

正直、面倒ごとにかかわりたくなかったので、早々に帰宅しようと思っていたのだが、

怒鳴られている生徒の涙をすする声が聞こえ私はその場に戻った。

「お前は何で私が言ったことを守れないんだ!本当にどうしようもない奴だな!」

怒鳴り声と泣いているおとなしそうな眼鏡をかけた女子生徒がそこにはいた。

私は声をかけた。


「あの、彼女が何かしたんですか?」

森野先生は私のほうへ振り向き、私を睨みながら

「うるさい! お前には関係ないだろう。あっちに行ってろ!」

「でも、彼女泣いてますよ。そこまでして怒鳴るようなことがあったんですか?」

この時に森野先生の目つきが変わった。これは確実に私が次の標的になったようだ。

「なんだと……私のやることにケチをつけるのか? いいだろう。次はお前を徹底的に追い込んで、学校にこれなくしてやるからな! 覚えとけよ!」

そういうと森野先生は、階段を上りどこかへ行ってしまった。

私はため息をつくと、再び下駄箱に向かおうとした。

すると、森野先生に怒られていた女子生徒に呼び止められた。

「あの……ありがとうございました……」

私は彼女のほうを向き、

「別に気にしなくていいよ。あと、これ使って」

そういって私は彼女にハンカチを手渡した。

彼女は驚いたような表情をし、

「……ありがとうございました」と言った。


ちなみに、その後の森野先生との顛末はこうだ。

その時の会話を携帯で録音していた私は、翌日担任にその録音と森野先生のこれまでの行動を伝えた。

結果として、森野先生は数か月後には学校を去っていた。


「あの時、私先輩の事が……あの……好きになって……」

彼女は顔を真っ赤にしている。

なんだか改まってこう言われるとさすがに照れる。

しかし私は、誰かと親密な関係になることを避けている。

だから申し訳ないが、告白された時も断っているのだ。


そこから少し間をおいて彼女は意を決したように話し始めた。

「それで、一度断られてはいるのですが……でも、やっぱり私、先輩の事が好きなんです!」

高校を卒業してから早4年、それだけ会っていなくても私の事を思い続けてくれていたのだと思うと本当に嬉しい。

だが、それと同時に申し訳ない気持ちになる。おそらく1度目の人生であれば、このまま彼女と付き合っていただろう。

しかし私は幾度も転生を繰り返す中で、親密な間柄の人との別れを何度も経験してきた。

だからこそ、誰かと一緒にいるということは必ず別れがつきまとうのだ。

私は今回の人生で、親とも縁を切っているほど徹底してきた。

だから申し訳ないが、彼女の気持ちにはこたえられない。

……断ろう。彼女が傷つかず、さらに次の人を見つけられるように。


「あの……」

そこまで言うと、彼女は私の言葉を遮った。

「わかってます。だから今、答えはいらないです」

彼女は下を向きながらそう言った。

そして私のほうを向き、見つめながらこういった。

「だから、友達から始めてください。友達から始めて、私の事を少しでも好きになってくれたら、その時私と付き合ってください」

「でも、好きになるかどうかは……」

彼女は微笑みながら、

「大丈夫です。好きにさせてみせます! そのために私、高校のころからいろいろ勉強して、少しでもかわいくなれるように頑張ってきたんです! これからはもっと頑張りますよ!」と言った。

彼女のその笑顔を、私はとても可愛らしいと思った。


それと……と彼女が続けた。

「もし先輩に恋人ができたら、私は先輩の事をきっぱり諦めます。だから……だからそれまでよろしくお願いしますね!」

彼女の表情は笑っていたが、目には少し涙がにじんでいた。

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