10度目の転生なので全部占いに従ってみた

ハシダスガヲ
ハシダスガヲ

公開日時: 2021年2月1日(月) 05:34
文字数:2,458

月見里さんの家を後にし、私はそのまま駅に向かった。

しかし、早く着きすぎてしまい時刻は17時30分を回ったところだった。

どこかで時間をつぶすほどでもないので、駅前で待つことにした。

すると数分後、声をかけられた。

「先輩!お待たせしました」

声の主は倉橋さんだった。

彼女は昼間の服装と違い、少し着飾っていた。

「服変えてきたんだね。自分は昼間と変わらないけど大丈夫かな?」

倉橋さんはにっこり微笑み、

「大丈夫ですよ!さあ、行きましょう!」と言い、私の手を引いて会場へと向かった。


プラネタリウムの館内に入り、倉橋さんがチケットを係員へ渡す。

係員から席番号を渡され、私たちは指定の席へと向かった。

横並びの席に座り時計を見る。まだ開演まで時間があるようだ。

「プラネタリウムに来るのなんて久しぶりだけど、倉橋さんはよく来るの?」

「いえ、私も久々に来ました。でも、きれいなものを見るのは大好きですよ!」

そういう彼女の眼はとても輝いていた。

「私、生でオーケストラの演奏聞くの初めてなんです!だからそれも楽しみで。先輩は聞いたことありますか?」

「あるよ。やっぱり生で聞くと迫力が違くて、すごくいいよ」

「そうなんですね!楽しみだなぁ」

彼女は子供のようにワクワクしている様子だった。


そうこうしているうちに開演のブザーが鳴り、あたりが暗くなった。

アナウンスとともにドーム型の天井に映し出されるきれいな星空、それに合わせてオーケストラが奏でる音楽が実にマッチしている。本当に素敵な時間だった。

ふと隣を見ると、倉橋さんは真剣な表情で星空に見入っていた。

淡い星の光に照らされた彼女の横顔はとても美しいと思った。

そこから1時間半ほどですべての演目が終了し、

あたりが再び明るくなる。現実に引き戻される感覚がした。

私は倉橋さんのほうを見て、

「すごくきれいだったね」と言った。

「はい。すごくきれいでした。……それに先輩と来られて本当に良かったです」

彼女は優しく微笑みながらそう言った。


他の観客たちが、ぞろぞろと外へ向かっていく。

私たちも周りにならって、外へと出た。

「この後時間ある?良かったらご飯でも行こうよ。おごるからさ」

彼女は嬉しそうに言った。

「いいんですか!行きます!でも、おごりじゃなくていいですよ。私もちゃんとバイトしてますからお金持ってますし」

「いや、さすがにタダでこんな素敵な体験をさせてもらったんじゃ悪いからおごらせてよ。何か食べたいものある?」

彼女は少し考えると、

「そうですね……パスタとか食べたいです」と言った。

「了解。そしたら、近くにおいしいイタリアンがあるからそこに行こう」

そう言って私たちはイタリアンのお店へと向かった。

お店は意外と空いていて、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。

店員に2人掛けのテーブル席へ通され、向かい合って座りパスタとワインを注文した。

「ワイン頼んじゃったけど、倉橋さんは飲める?」

「そこまで強くはないですけど、好きですよ」

「よかった。ここワインもおいしいから楽しみにしててね」

私は笑顔で言った。


パスタとワインが運ばれてきて、私たちは乾杯し、食事を始めた。

食事も終わり、ワインを飲みながら話をする。

「今日は本当にありがとうね。誘ってもらわなかったら、多分行くことはなかったかもしれないから」

「ふふ、そう言っていただけると誘ったかいがありました。でもなんだか不思議な感じですね、先輩とこうして二人で食事をして、お酒を飲むっていうのは」

「そうだよね。高校生じゃお酒飲めないから、なんか新鮮だよね」

「ふふ、そうですね。やっぱり先輩と一緒だと楽しいです。また、どこかに誘ってもいいですか?」

「そうだね。またどこかに行こうか」

彼女は嬉しそうに、「はい!」と言った。

その後はおつまみを頼みつつお酒も進み、気が付けば22時を回っていた。

彼女の顔は赤らみ、徐々にろれつが回らなくなってきている。

私は最後にお水を注文し、彼女に飲ませ店を後にした。


「大丈夫?結構飲んでたけど……」

私が心配になり声をかけると、

「大丈夫です!」

といいながらも彼女はふらふらしていた。

「家まで送るよ、もう時間も遅いし」

「……ありがとうございます。お言葉に甘えます!」

そう言って彼女は私の腕に抱きつき、歩き始め、道案内されながら彼女の家へ向かった。


歩き初めてから10分ほどで彼女の家に着いた。

彼女の実家は一軒家で、隣に小さな公園がある。

彼女は公園のベンチを指さしながら、

「あそこで少し酔いをさましてから帰ってもいいですか?」と言い出した。

「いいよ。今の状態で帰ると、家族も心配するだろうし」

と言い、2人でベンチに腰掛けた。

彼女は私の腕に抱きついたまま、私にもたれかかった。

「それにしても、結構飲んだね。大学でも結構飲むの?」

「いえ。大学ではほとんど飲みません。こんなに酔っぱらったのも初めてです。やっぱり先輩と一緒だと、楽しくて飲んじゃうみたいです」そういった彼女はいたずらに笑って見せた。


すると彼女が突然立ち上がり、

「先輩。お話があります」と言い出した。

相変わらずふらふらしているので、私も立ち上がり彼女を正面から支えた。

彼女は急に真面目な顔をして、

「私、やっぱり先輩の事が大好きです」と言い、

私の首に両手を回して、キスをした。


私は突然のことで固まってしまった。

唇には、彼女の唇の柔らかい感触が残っていた。

彼女は私の首に手を回したまま、私の目を見つめ、

「答えは、また今度聞かせてください。月曜日のお昼に、また駅前の喫茶店で会いましょう。今日はありがとうございました」

そう言うと、彼女は足早に家へと入ってしまった。


私はその場で少しの間立ちすくみ、自分の家へと向かった。

帰る道中、私の頭の中には先ほどの光景が何度もフラッシュバックしていた。

彼女はいよいよ本気で私との関係を決めに来るようだ。

私もなあなあな返答はできない。

だからこそ、彼女が前に進めるように、次の人を見つけられるような返事をしなくてはいけない。

家に着いた私はベッドに突っ伏しそのまま眠ってしまった。

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