本日新しくできたサイトの記念ということでちょっとしたお話を投稿してみようと思います。
――某ビジネス街の真ん中。
ここは特殊な場所である。
昼はサラリーマンが縦横無尽に集まり、
「今日のランチ何にするかなぁ~」と、
ぼやくスーツを着た人たちが集う街である。
――そして夜は、歓楽街に変化する。
ドレス姿の薄着の女性、蝶ネクタイをした男性が呼び込みをしている姿が目に浮かぶ。昼間いたであろうサラリーマンは泥酔者へクラスチェンジする。
――そう、昼と夜でこの景色は変わる。
周りにいる人々も、そして外観さえも。
このセンター街の中心地にとある店が存在する。
【ラーメン春風亭】
この店にとある店主がいる。
客の皆からは、「ラーメン屋のおやぢ」と言われている。
トレードマークは黄色いバンダナ。
実際の年齢は不詳。
しかし恐ろしく威圧感があり、ヤーさんでさえ、このおやじに絡まない。
外観は普通のラーメン屋の店のはずだ。
――――しかし、この店は何もかもが普通ではない。
まずメニューだ。
ラーメン、カレー、牛丼、うどん、パスタ。
サイドには色々あるが、この5つがメインだ。
飲み物はコーラ、オレンジジュース、ビール、焼酎、ウィスキー、ブランデーと極端なチョイス。
風体はスキンヘッドに眉毛も剃り、サングラス。ビジネス街なのでお盆は当然閉店。
夏のバカンスを楽しんだ後は黒く焼けた肌を人前に晒す。
何より、ここの店長であるラーメン屋のおやぢは一風変わった経験を持つ。
学生時代は、空手と柔道の道場に通い、中学卒業後自衛隊に入隊。
その後、大手餃子チェーン店で修業。ノウハウを身に付けた後あっさり退職。
自衛隊時代の任期満了時のお金を使い、ラーメン屋を開店。
そんなことを知らない客がたまにちょっかい出す。
「おい、店主!!この店は客に髪の毛が入ってるもん食わすんか、ワレェ!!」
するとおやぢは、ラーメンのスープ用のお玉を取り出し、身構える。
何故か店に銅鑼が置いており、おやぢは力強く叩く。
ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
店中の客が一斉にいちゃもんを付けた客のほうに視線が向く。
アルバイト店員は、それを合図に裏へ逃げていく。
「何やかましい音かましとんや!!! いてもうたろか!!!」
いちゃもん客は一瞬ひるむが、おやぢを睨みつけて虚勢を張る。
そして、おやぢはどこからともなくお玉を取り出した。
先ほどとは全く別の鋼鉄製のお玉を取り出し、いちゃもん客に近づいていく。
「お客さん、その髪の毛は誰のやとおもいます?」
おやぢは、右手で鋼鉄製のお玉を構えて、いちゃもん客の目の前に立った。
「てめぇのだろ! でなければそこのアルバイトのや!」
浮いている髪の毛は黒く長いものだった。
「お客さん、うちの店にはそんな髪の毛の従業員はおりませんぜ」
おやぢはバンダナを外してこういうのだ。
ここで逃げるか非を認めれば何事も起こらなかった。
いちゃもん客はさらに言い返す。
「てめぇ、なめとんのか!! 剥げてるからっててめぇのだと言ってねぇ!」
いちゃもん客がおやぢに殴り掛かろうとしたとき、入り口のドアが勢いよく開いた。
5人ぐらいの派手なスーツの男が店の中に入ってくる。
「ひぃ!」
いちゃもん客は入ってきた男に胸ぐらをつかまれた。
「兄貴、こいつ俺らに任せてもらってもよろしおまっか?」
そのまま店の外へ連れ出そうとした。
「ああ、三次、いつも悪いな」
「いえ、兄貴のおかげでいつも助かってますんで、これぐらいさせてくだせぇ」
いちゃもん客は派手スーツの男たちに店の外へ連れていかれた。
そして店内の客たちは日常に戻っていく。
逃げたアルバイト店員も帰ってきた。
「おやぢさん、本当に懲りないですよね。ウェイティングしてきます」
「ああ、それより咲、いつも悪いな」
――そう、この店ではある理由でアルバイト店員には高時給を払っていた。
それはまた後日語るとしよう。
―――いちゃもん客はその後、どうなったか? 誰も知らない。
このお話が気に入ったら評価をお願いします!
1pでも喜びます!
読み終わったら、ポイントを付けましょう!