老人: 君の目にはなにが映ってる?
老人: お前の目に映っているものは真実か? そうじゃないだろ、このスマホやパソコン、タブレット、あらゆる所で活用されている電子決済。それらは単なる機械に過ぎない。
老人: 昔は何も無かった、いい時代だ。たしかに全盛期には大きなパソコンに、ブラウン管テレビ、そんなものはあった。今の時代のような機械はない。時代とともに変わる、それに対応する。本当に必要か?
老人: 俺は昔に戻りたい。そのほうが今よりも落ち着いていて、自分を取り戻せる。意味わかるか? 今ではSNSか何かで言いたい放題だ、そんなものを作るから、世界が混沌になる。当たり前だ。もう一度聞く、お前の目に映っているものは真実か?
老人は険しい表情をみせ、少女に問う。今と昔の変化、そして変わりゆく未来と生活に不審に思っていたのだ。
暗い部屋から日差しが差し込み、朝となる。老人は朝起きると、ベランダにあるローズマリー畑に水を差す。
老人名はスタン。スキンヘッドの大柄男性。
隣にすむ女性メイはポールダンサーを目指している。この世界、国では進歩している。器用に話すAIロボットに、宙に浮くモノレール。機械で埋めつくされる時代。
スタンはそんな中、植物を育てたり、原始的な車に乗って、仕事をしている。この男はスマホを持っているが、電話する以外に使わない。時計は機械式腕時計で、スケルトンで中の針や機械が見える。
ローズマリーの手入れをしているとインターフォンが鳴る。スタンは扉を開けるとメイが居る。メイはオドオドしている。指と指をクルクルと、させている。
スタン: なんだ?
メイ: あ、あの。 ちょっといい?
スタン: だからなんだ? なにかお願いでも?
メイ: ええ。実は私の車が壊れて、乗れなくなったの。
スタン: それで?
メイ: それで職場まで送ってほしいの。私1人だし、あなたしか友人がいないの。
スタン: 友人ね、いいだろう。下に降りて待っていろ、すぐに行く。
メイがありがとうを言う前にスタンはさっと扉を閉めた。メイの格好は見るに堪えない。女の子らしくない。コートを着ているとはいえ、ボタンを止めていないので、丸見えだ。コートの下はポールダンサー用ショーツ、服を着ている。スタンはこのような服装を嫌う。
仕事については深くは知らない。友人と言われたが、お隣さんという事で少し話したぐらいだ。
いつも悲しそうに帰ってくる印象を受ける。職場でなにかあるのだろう。
スタンは駐車場から車をアパートメント前まで回した。
すると、メイは露骨に嫌な顔を見せる。
メイ: え、これ車なの? こんな車があるの?
それもそのはず、この車種は1991年製日産のグロリアシーマタイプⅡ リミテッドというモデルだ。今の現代にはそぐわない風貌をしている。
スタン: 嫌なのか? なら送らないぞ。
メイ: ごめん! でもこれいつの時代の? かなりレトロね。
スタン: 今、何年だ?
メイ: 2030年よ。
スタン: そうだ。こいつは1991年の車だ。
メイ: え!? すごい! まだ生きてたんだね。
スタン: 早く行こう、遅れるぞ。
メイ: そうだった!
そう言うと、メイは車に乗る。送る途中は会話は無い。
職場に着くと、スタンが目に入るのはおびただしい職場だと言うことだ。あまりいい場所とは思えない。ここは辺りも暗い。ポールダンサーのクラブは勿論、エロティックマッサージ店などがある。
スタン: お前の職場はこの辺か?
メイ: え? まあ、あそこの4階建てのマンションだけど。
スタン: そうか、早く行け。
なにやら怖い表情をしている。驚きながらもメイは車から降りて、職場に向かう。その姿をスタンは見つめていた。
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