あなたは私を蘇らせてくれた

Kay.
Kay.

上編

公開日時: 2025年1月23日(木) 01:17
文字数:1,474

老人: 君の目にはなにが映ってる?


老人: お前の目に映っているものは真実か? そうじゃないだろ、このスマホやパソコン、タブレット、あらゆる所で活用されている電子決済。それらは単なる機械に過ぎない。


老人: 昔は何も無かった、いい時代だ。たしかに全盛期には大きなパソコンに、ブラウン管テレビ、そんなものはあった。今の時代のような機械はない。時代とともに変わる、それに対応する。本当に必要か?


老人: 俺は昔に戻りたい。そのほうが今よりも落ち着いていて、自分を取り戻せる。意味わかるか? 今ではSNSか何かで言いたい放題だ、そんなものを作るから、世界が混沌になる。当たり前だ。もう一度聞く、お前の目に映っているものは真実か?


老人は険しい表情をみせ、少女に問う。今と昔の変化、そして変わりゆく未来と生活に不審に思っていたのだ。


暗い部屋から日差しが差し込み、朝となる。老人は朝起きると、ベランダにあるローズマリー畑に水を差す。

老人名はスタン。スキンヘッドの大柄男性。

隣にすむ女性メイはポールダンサーを目指している。この世界、国では進歩している。器用に話すAIロボットに、宙に浮くモノレール。機械で埋めつくされる時代。

スタンはそんな中、植物を育てたり、原始的な車に乗って、仕事をしている。この男はスマホを持っているが、電話する以外に使わない。時計は機械式腕時計で、スケルトンで中の針や機械が見える。

ローズマリーの手入れをしているとインターフォンが鳴る。スタンは扉を開けるとメイが居る。メイはオドオドしている。指と指をクルクルと、させている。


スタン: なんだ?


メイ: あ、あの。 ちょっといい?


スタン: だからなんだ? なにかお願いでも?


メイ: ええ。実は私の車が壊れて、乗れなくなったの。


スタン: それで?


メイ: それで職場まで送ってほしいの。私1人だし、あなたしか友人がいないの。


スタン: 友人ね、いいだろう。下に降りて待っていろ、すぐに行く。


メイがありがとうを言う前にスタンはさっと扉を閉めた。メイの格好は見るに堪えない。女の子らしくない。コートを着ているとはいえ、ボタンを止めていないので、丸見えだ。コートの下はポールダンサー用ショーツ、服を着ている。スタンはこのような服装を嫌う。


仕事については深くは知らない。友人と言われたが、お隣さんという事で少し話したぐらいだ。

いつも悲しそうに帰ってくる印象を受ける。職場でなにかあるのだろう。

スタンは駐車場から車をアパートメント前まで回した。

すると、メイは露骨に嫌な顔を見せる。


メイ: え、これ車なの? こんな車があるの?


それもそのはず、この車種は1991年製日産のグロリアシーマタイプⅡ リミテッドというモデルだ。今の現代にはそぐわない風貌をしている。


スタン: 嫌なのか? なら送らないぞ。


メイ: ごめん! でもこれいつの時代の? かなりレトロね。


スタン: 今、何年だ?


メイ: 2030年よ。


スタン: そうだ。こいつは1991年の車だ。


メイ: え!? すごい! まだ生きてたんだね。


スタン: 早く行こう、遅れるぞ。


メイ: そうだった!


そう言うと、メイは車に乗る。送る途中は会話は無い。

職場に着くと、スタンが目に入るのはおびただしい職場だと言うことだ。あまりいい場所とは思えない。ここは辺りも暗い。ポールダンサーのクラブは勿論、エロティックマッサージ店などがある。


スタン: お前の職場はこの辺か?


メイ: え? まあ、あそこの4階建てのマンションだけど。


スタン: そうか、早く行け。


なにやら怖い表情をしている。驚きながらもメイは車から降りて、職場に向かう。その姿をスタンは見つめていた。










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